第16章 危ない!
「どうしました?」
メイがリンの顔を見るが精気が無く、目は虚ろだった。相当の精神的重圧かショックを受けたに違いないと彼女はす思った。
「う・・あ・・」
リンは言葉十分発する事が出来ない状況だった。メイの表情がさっと変わった。
「重症です。これは・・私の手に負えるかどうか」
「え・・」
ダンは絶句した。視覚的に見えるリンは、確かに虚ろな表情ではあるが、全力を出し切ったような脱力感に見えたからだ。回復剤も与え、既に肉体的には体調も戻って来ているとも見えるのに、重症と言うメイの言葉に蒼白となった。リンは第14班内において、また組織内においても重要な人物だ。数々の今まで貢献をしてきて、最前線に常に立ち、その特異な能力を次々と発揮してきた。身体能力の一部は組織一の特性を持つ者だ。
ダンが報告すると、シンは自分もすぐ行くと言い出した。心配なのだ。リンはシンの信頼を一番とも言える程厚く持っている者だからだ。ある程度マコトより単独行動を任せても、ケンと同様に思慮深く、安心して任せられる者だからだ。
アマンが、
「お待ちください。ご心配は重々承知致しますが、なぜメイ博士を派遣されたのかも含めて、既にショウ班長は隊長と合流もしています。操縦士だけの役割では無いのと同様に、副首班も現地に居られます。ここはメイ博士を信頼しましょう」
「あ・・それは、俺が間違っていた」
シンはすぐ気づいた。信頼して送り出しているメイ博士を、まるで信用していないように聞こえるからだ。彼女に託して、大事な博士を遠方に幾らショウの護衛であっても行かせているのに、その見立てを信用しない言葉に聞こえてしまう、アマンの指摘は実に正しい。
「いえ、首班にご指摘を申し上げる立場では御座いませんが、ここはメイ博士を信用して下さいませ。恐らく精神医学的な事を学んで来た第一人者だと思いますので」
「それも、そうなのか・・リン程の男が、こんな感じになると言う位の衝撃的な出来事、或いは眼には見えないが攻撃を受けた可能性もあると言う事だね?」
「そこまでは・・私にも分かりませんが、今、画像解析を現地にて急ピッチでショウ班長がやっておられます。恐らく細かい分析が成されている筈です」
「うん・・そのつもりで一緒に行かせた。隊長を呼ぼう」
シンは、マコトと一緒にケイジも呼びだした。まるでそこに2人が居るような精巧な8G立体画像であった。




