第16章 危ない!
その時、マコトも現地に到着したが、いきなり蝙蝠群に囲まれた。それでもリンが居る場所まで強引にマコト達は進んだ。位置は当然把握できている。バチバチとSR表面に蝙蝠がぶつかるが、この機種が頑丈でも、ミシミシとやはり柔らかい素材である、その面は圧迫されて行く。
「まずいな・・これは」
リンと同じくマコトも同じ言葉を口にした。ケイジも不安な気持ちを隠せなかった。彼が直面するこれが実働班の直面する緊迫した場面なのであった。このままでは恐らく圧殺されるだろうと思った。引くにしても圧倒的な数で、後方にも既に厚い蝙蝠群が囲んだ。
「進むぞ、とにかくリンの所までは行く」
「隊長!無理をしたら駄目だよっ!」
シンの声が聞こえた。しかし、今この場合のマコトの判断は正しいと思えた。
「行くしか無い・・俺は、例え命令違反でもここは進む」
マコトはそう言い、もう恐らく数十メートル近くまで到達しているだろうリンのSRに近づくつもりだ。その後方から、少し蝙蝠群が乱れた。
「俺がサポートするし、蝙蝠を引き付けておく、隊長、進んでくれ」
ランだった。ランがアバター操作で、カニがまるで獲物を掴むように、蝙蝠を蹴散らしていたのである。
「ようし、もう少しだ。リン!もうすぐだぞっ!」
マコトの声がリンの耳に入った。
「隊長!少し耳を抑えていてくださいっ!今まで発した事の無い音階を拡声器でやって見る所だったんで!」
「おうっ!っと、言うか、こっちが危なかったじゃねえかよ。ほれ、ケイジ耳栓だ」
その時びりびりと空気が揺れるような感覚になった。そしてリンのSRが見えたと同時に蝙蝠が一斉に引き出した。
「おっ!何か効果があったのか、蝙蝠が引いて行くぞ」
シン達が見守る中、蝙蝠は凄まじい翼音を響かせながらその場の囲みは一旦消えて行った。SRにぶつかって地面落ちた蝙蝠の死骸は転がっているが、それをヤモリがさっと来て咥えて行った。かなり大きなヤモリだ。体調は50センチを超える個体のものも居た。
マコトが、ケイジにSR機を任せて、リンの機に走って移動した。もうあっと言う間の事だった。




