第15章 恐るべき計画
「それだけ高いご見識をお持ちだからこそ、ご興味があると思い、今お見せしました。この細胞は変異をします。それは、地球上のどの生命の根源に遡るまで。全ての可能性を持ちます」
「ほう・・すげえな。つまり、和良司令官は国家に恐らく警戒されていた。そしてこの研究から外されていたんだろうなあ・・何を研究していたのかも知っていたからこそ、M国の研究部門にもアタックはしていたんだろうが、流石にその彼でも簡単に破れぬ鉄壁の陣が敷かれてあった」
「そう考えれば、今の複数の生体の存在は納得出来ますし、自分でやろうとした2か所の研究施設は納得出来ますよね」
アマンが言うと、リンも深く頷いた。
「そこでだ、その蝙蝠が原種なんだとしたら、日本の生体武器のルーツは繋がって来るだろう?そう思っていたんだ」
「良く調べてみます。恐らく、そうだとすればオオコウモリの分析値と変わらない結果だったので、そのままにされている可能性はありますよね。そこまで色んな生体も出現していたので、深く追求される事は無かったし、やれる事なんて所詮は人間ですものね、限りもありますわ、それにそこまで余裕なんて全く無かったから」
「うん・・じゃあ、君が思うように指示をしてくれ。どんなにその細胞が変化するのかも楽しみだ・・あ・いきなり変化する事って言うのはあるのかい?」
リンが問う。
「すぐには視覚的に見てどうかは分かりません、しかし、反応は起きます。確実にそれは視覚的に見てとれるものです」
「うん・・すぐやろうよ、指示をくれ」
リンが興味を示したようだ。
「では・・どれだけの音域が可能なのか、私にも実際リン班長のホーミーなる超音波域が分からないので、丁度北海道基地には測定装置が御座います。耳栓を私は致しますが、可能な音域を測定しますので、その波形をチェックし、その領域に達する共鳴が起きたレベルで実際に細胞に超音波照射をしていただきますが、よろしいですか?」
「良いよ、君の思う通りにやってくれ」
こうして、アマンは実際に誰もリンがどの位の音域を聞き分け、且つ自分がその低音域も含めて超音域まで発する事が出来るのか調べた最初の学者となった。彼女にとって見れば、単なる特異体質とかでは片づけられないリンの能力は、大変人間学においても興味があったのだ。しかもそれこそが人類再生計画おいても重要なものであるからだ。
アマンが驚いたような顔でリンを見つめていた。計測が終了したのである。




