第15章 恐るべき計画
他の者達も同様に、この会議の為に現地調査まで行い、且つアマンに完璧とも思える数々のデータを示されては、確かに個々にはとても貴重な検証を重ねて来ていた。それがこの場でリンが火付け役になり、シンの多彩な手法によってそれを引き出しはしたものの、本来はまだ彼らの内にあって、表面には出て来なかった部分かも知れなかったものだ。言うなれば、そこまで自分達が、調査もしているのなら、公表せよとシンもこの場で促したのだ。否・・この場の演出こそ必要だったのかも知れない。組織には、今持ってそう言う情報収集魔のような輩が一杯居るからである。ただ、オープンにしたのは、ある程度旧組織からの脱却を目指したからだ。このように、非常に人間心理と言うのは複雑だ。むしろ和良司令官のような完全合理的主義を貫けば、そこには正邪の論も起こらないとは思うが、逆に無機質な人間が生まれるだけだ。それなら、いっそ人そんな面倒臭い人間なんて要らないと言う発想にも繋がるのだろう。
ここで、リンはアマン、シン都別室に入り、飲料を口にした後、
「ふふ・・今回は一気にやったよなあ・・むしろ小気味が良かったよ。他のトップ5の面々と言うか現組織のリーダー達は、どこか競争意識もあるのかな」
「ふ・・リンらしいストレートな意見だ。だが、お前の見立ては合っている」
シンは笑った。アマンは、
「でも・・そこまでにリン班長の多大なるご提案と、一気に今回進める事が出来た現地確認とミッションが、こうも見事にマッチングするとは想像もしませんでした。結局各自が全く違うテーマで色んな調査をしていたのに、見事に今日の会議であの難しい方々を、それぞれ焚きつけるような手腕で引き出させましたよね、うふふ」
「いやいや・・俺の見た眼ではアマン主査、君がぴか一だったよ。あの話術は誰も勝てない。見事なものだ」
リンは褒めた。シンが疲れているのは、様子を見ても分るし、会議の前にはM国まで飛んでいたのだ。まさに縦横無尽の働きであるし、とても真似の出来るものではない。
アマンは、
「いえいえ、私などは到底皆さまの足元にも及ばないと存じます。本日の会議を見ても、私は自分のあるものを全て披露して対処しておりますが、皆様にはもっともっと奥深い知識や、経験に基づいた議論が出来ると思います。いっぱいいっぱいな私に、それは過剰な評価ですわ」
「ふ・・小気味良いね、君は」
リンが、アマンを非常に気にいったようだ。こう言うスパッと言う物言いが性格にもよるものだが、リンもそうだった。物事を決める際に、だらだらととりとめの無い話をするのは、無駄だといつも思っているし、リンは合同の会議自体を嫌っていた。個別に話せば、どれだけ優秀な者なのだと誰もがリンの事を知るだろう。アマンはもともと優秀さは知られていたが、特務の任の為に殆ど表に出る事はなかった。まさに神秘に包まれた女性であり、学者なのである。




