第14章 大きく動く
「ああ、ちょっと宇宙の仕組みについて、聞きたかったからさ、雑談しても良いかい?」
「勿論っす。喜んで」
シンに強い憧れの念を抱いているエイタにとっては、こんな機会は滅多に無い事だ。シンがどのような事を思ってこの会話を持ちかけたのかは、分からないものの、今M国に関しては、迂闊に地下都市に進入が出来ない、まだまだ多くの謎が残っており、それらを解決しない限り、無人のMRでの操作が主体になるのだ。
「どんな事でしょう?」
エイタは聞く。
「まあ、素朴でとりとめの無い話なんだけどね、付き合ってくれるかい?業務もあるだろうから、雑談だと思って聞いて欲しいし、何を馬鹿な事をと笑ってくれても良いからさ」
「はい、良いっす、良いっす。そう声を掛けて貰えるだけ嬉しいすから」
その頃黒川主査も、同じ顧問役だが、神野元老に昨日の経緯を報告していた。かなりシンは殆ど表情も変えずに、話題も穏やかだったものの、緊迫した面談であった旨の報告に、
「うむう・・我々も確かに黒服と言う立場でもあったし、黒川君にしても厳密にいえば第2世代との境は実の所はっきりしたものでは無いんだよ。その次の又おかしい表現だが、第2.5世代と呼ばれる極く少ない出生者の一人であるとも言える。勿論その最年長者であり、私とも2歳しか違わないからね。私はその第2世代の最年少者になる。はは・・どうでも良い事だろうと思い、その事を隠しているが、恐らくシン君も分かっているかも知れないね。確かにその中にシリマツ官吏や、ケンシン部長、若山主任のようなメンバーが居る。ただし、その辺の立場は明確には彼らに示しては来なかった。それは必要もないとの考えだし、シン君も聞こうとはしなかった。旧組織は君も知っているが、非常に全てにおいて、セクト方式でね、その壁を破るのは到底簡単なものでは無かったんだ」
「でも、神野元老は大いに疑問を持ち、動かれて来たじゃないですか。それはどこにその原点があったのでしょう?」
「それは、アカデミーの設立だね。純粋なそれは工作員を育てるような教育そのものであった。私もその訓練を受けて来た一人だったからね、つまり実働の名を借りた、電磁パルス後の世界の、人為的影響とか紫外線の影響等をテストさせる為にだよ。つまり、言い代えれば人体実験そのものだよね」
「でも・・それだけ優秀な者達を集めた訳でしょう?」
「それでは、本当なる旧ドームからの話から始めるが・・長くなるよ」
こうして2人の顧問は話に入っていた。
そして、シン達だ。リモートとは言え、そこの椅子に向かい合って話し合っているようなリアルなものだ。それは、本当にちょっとそこで友達と喋るような感覚だった。同時に話される彼らの話題が違うものではあるが、やはりシンがそれを起動させたプログラムの一端であったような気がしてならない。彼らが本当に積み上げて来た無数の会話は、色んな寄り道もしながら、それでも体感の中から色んな発想を飛ばして来た。全く妄想だった事も多々あるし、冗談で言った事が実際に起きた事もある。彼らは、人類史上2つの大きな惨禍に見舞われて、それでまさに殻を破って地上に降り立った誰もが体験した事のない、未踏の大地を歩んでいるのである。そこには、例え無駄話でも良い。又現在神野元老と黒川主査が話をしているように、そこまで緊張感のある話でも無かったように思うが・・?




