第14章 大きく動く
「済みません、突然訪問しまして。少しお聞きしたい事もあったので」
「良いですよ、私も一時は首班と呼ばれた立場です。君の色々大変な事は分るからね」
「有難う御座います」
別に黒川に疑念がある訳では無かったが、その前にシンはランに連絡をしており、何か話をしてから、黒川と今まで使用していなかった部屋で相対したのだ。これは2人だけの会談と言う事で、特別に配慮したのだなと言う事は、黒川にも伝わった。特に違和感も無かったものだった。
「一つ確認したいんですが、黒川主査は、神野元老と同じ年齢なんですよね?」
「はは・・君達と行動していた時は、恐らく君が思い描いていただろうが、若返り効果のサプリメントを和良司令官より貰っていた。その時には、君は知らないだろうし、レンジと言う存在については、殆ど知る者は居なかったからね」
「あの・・つかぬ事をお聞きしますが、どこで接点が?俺も余り詳しく聞くのも失礼だろうと思っていたし、もう終わった事なので、根堀り、葉掘りをお聞きするのは失礼だと思ったので・・」
「ああ・・それを隠すつもりも無かったが、今思えば、私がもう披露したが、アマン主査と同じ極秘研究のメンバーだったと言う事だ。そして、その研究と言うのはこれまた極秘でね、誰がメンバーであり又どんな場所でそれをやっているのかは分からかったんだよ」
「だから・・極秘か・・成程」
「君達が海底トンネルを発見した時には正直驚いたが、それは特に公になっても不思議な事では無かった。ただ地下通信路の事が出て来てからは、かなりレンジ君と呼ぶよ、見た目は君達と同じ第3世代だし、事実その年齢で施術をしていたからね、第3回目の」
「それを和良司令官だと思われたのは何時なんですか?」
「君達が、対馬海洋研究所を見つけた時だ。激しく動揺してね、その前に初めて瀬戸内海研究所なるものの存在を聞いた。それも、極秘の研究の一貫だと思っていたから、私はもうその時には実働メンバーでは無くなっていたしね」
「成程・・合法的に内部任務にすり替えられていたと言う事っすね」
「多分・・そうなんだろうが、あのようにとんでも無く天才的な人物だ。正体が知れるまでにはまだまだ時間があった」
「で・・何時頃その正体を知ったんすか、俺は神野元老に、あの黒服内紛劇を聞いていないし、聞くべきじゃないとずっと封印しておりました」
「それはそうだろうなあ・・多分、黒服達の野外活動によって、皮膚が紫外線でやられて冬眠で寿命を縮めた経緯と共に、15人いた筈なんだ。勿論私もその一人だよ」
「そうでしたか・・でも神野元老は、俺と同じ遺伝子を持つとも聞きました」
「その辺についても、私自身は詳細を知る訳では無いが、齟齬は無いと思う。大体ベスト50遺伝子に集約される私も含め、現旧ドームでの現存人類は全てそこに当てはまるからね」
2人の会話は、根本的な話から始まっていた。
「つまり、その15人の行方を知りたいとか?」
黒川主査が聞く。




