第14章 大きく動く
「恐らくAI管理における旧時代では、彼らの存在などが表に出る事は一切無かっただろうね、そして貴女の受け継いだ研究もそうだ。恐らく方向は大きく変化していた筈なんだ。だが、この研究所に残存していた事こそが、代々受け継いで来た学者の気骨や、その強靭な使命感だと思うんだよ。ついそれも最近の事だが、学問のマッチングがあって、貴女もそうだったが、眼から鱗の展開があった。そうだよね」
「まさしく・・その通りですわ」
アマンは、きらきらした眼でもう尊敬しか無いシンの考えや、高い見識に深く頷くのであった。
「その上で、第15Dプリンタをランが改造してものを用途別にここに送って来たと言うのは、恐らくオフラインで可能性を引き出して貰いたいと思うからなのだろう。事実部長の所には、改良型20D、30Dプリンタをもう何十台も送り込んでいるからね。その度に部長も希望を伝えている。君もそうしたら良いよ。これは皆で作り上げられる俺達独自の機種にしたいよね」
「はい!」
アマンは満面の笑顔で答えた。傍に、これ以上の上司は絶対居ないだろうと思える最高の人が居るのだ。しかし、シンはこう言った。
「メイ・リー博士をここは呼ぶべきじゃないのかい?俺は勿論一刻も早く見たいけど、T国の5名の生体データも良くみたいと今の会話中に思った。唐突だろうか?」
「いえ!すぐ声を掛けます!」
アマンが2人を呼び出すと、実はそんなに遠く離れている訳では無かった。昔の地名で言うと、静岡県の海際に彼女達の新研究部が移動していたのである。当時の美しい富士山の姿はもう無いが、半分程の高さとなり、今も噴煙を上げている活火山だが、太平洋岸にある深い海溝が、すぐ眼の前にあるのだから、この亀裂が更に大きく広がる地球的大事変でもあった。地球生命体の約8割はこの時消滅したと言われる。電磁パルス爆裂がその後更に追い打ちを掛けた事で、シン達が今も探す、人類の生き残りには出会えないのも、その影響が大きい。微かに生命の伊吹は感じるものの、不明な生体との出会いしか無いのも、異常な光景でしか無かった。ここまでの経緯を改めて述べるが・・。
彼女達は、ほとんどシンと話す機会は少なく、喜んで15分程してやって来た。ショウの兄妹と言う事で髪は白金色、金色でこれは生まれた時からそうなのだそうだ、ショウも見事な銀白色だが、メイの白金色とはやや色合いが違うし、メイは丸く大きな眼鏡をかけている。視力が多少弱いのだそうだが、今になって彼女達のその姿態を紹介すると言うのもおかしな話になるのだが、つまるところ、シン達の第3世代は、シンも赤色の髪だ。ピアスもしていると言っているが、全くそれを気にしないからで、ずっとその恰好だ。ついでに言えば、この2人は長い髪の非常に整った、ショウと兄妹だと分る超美形の美女なのだ。アマンは短髪だが勿論2人に劣らぬ美形であるし、髪色は亜麻色と表現したら良いのだろうか、その髪色だった。生まれた時からそうだとこれも今更ながらここで付け足す。




