第14章 大きく動く
「あ・・そうですわね。でも、その辺の報告は補佐からあるべきでは?月の回収兵器や、装置が最近続々分析されているようですから・・その辺のリストは出ているんじゃありませんか?それは私でも閲覧出来る部分なので」
「そうか・・俺が眼を通していないだけだったか・・」
「それは仕方の無い事ですね。首班はとてもお忙しいですし、特にM国の方に注視されていたので」
ランが報告していない訳では無さそうだ。それが現在のシンが置かれた現状だ。どんな偉人、どんな鉄人・天才であろうとも、誰もが人とは全てを網羅出来る筈も無い。
「まず、それらは、恐らく和良司令官が張り巡らせた無線光ケーブルが無効化したんじゃ無いんでしょうか。今更そんな地底レーザーがあっても、そうすぐ利用出来るとも思って居なかったから、報告もしなかった。だから、あ・・済みません、又話が脱線しましたね。丁度そんなものがあるのに、何故M国で使用出来ないんだろうなと、カムイ副班長と話をした所だったので」
「主査・・君もマルチな人間なんだね・・あ、そうか。君もそう言う特殊な・・」
言いかけてシンが口を噤んだ。そう言う部署が確かにあった。しかし、暗黙の了解で余り広言しない事になっていたのだ。
しかし、アマンは平気な顔で、
「いいえ・・私もお傍に居るのに、何かお手伝いが出来ないかと常に考えておりますから」
「はは・・又その言葉で、今度は逆に利用出来るのでは無いかと思った。後で又ランに聞いて見るよ。で・・脱線したよね、はは。どうぞ続きを」
「まあ・・雑談の中からもヒントが・・でも一つの事が分かりかけて来ると、連鎖的に色んな事が見えて来る。実は私もそうなのかも知れません。今から見て頂こうと思うのは、そう言う事なんです。今はこちらに勿論居ない事は、首班がお話してくれました。よって、今までインプットされていたT新人類と称する彼ら5名の転生生体と言うデータをこのデータベースに入れました。これまたいずれの再生でも、クローンでも、又培養でも無い第3、第4生体と私は呼びますが、ベールに包まれたその生命の継続方法を少しでも知ろうと思うので、今回は分析を念入りにやりました。とにかく御覧下さい。あ・・私には内密の事でありますから、T国へ飛び、5名を遠隔から分析するつもりは毛頭ありませんので」
「うん、分った。何か凄そうだね」
シンは全てを先にアマンが語ったので、そのT新人類の件は、もう語らなかった。眼を輝かせて、計器類の一杯並んである、更に奥にあるアマンの個室の研究室に入るのだった。ここは彼女の顔認証しか入室出来ない。シンですらこれで入ったのは2度目なのであった。
「ほう・・結構充実しているようだね」
「こちらの部屋は2度目ですが、分かりますか?」
「うん・・前に入った時には、あのもごもごと動く細胞が、単体であった。けど、今はかなりのこれって、分裂細胞のサンプルだよね。つまり、アクリルケース内にはこのほぼ自分が納得出来る変異した細胞が入れてある。それが増えているよね、かなり。又、部屋の外にスタッフも居るが、そちらにも並べてある」




