第14章 大きく動く
「さて・・ある程度又見えなかったものが見えて来そうだ。どうするかだな」
「あら・・だって、現地をご自分で見られたいって言われていましたよね?又行かれますの?」
「あ・・これは、部長も調査してくれるって言う部分だから、今ランが言った言葉も参考に聞いて見るよ」
「では・・生体プリンタが到着したら、ご一緒に見て下さい。あ、室長も呼ぶべきですよね」
「補佐も呼ぶさ・・これは、何かとても大きな主力的なものになるかも知れない。こう言うものは、使う側の者の考え一つで大きく変化する。そう言う事を決めておかねばなあ、ショウも呼ぶとするか・・」
「まあ・・そっち方面も、そこまでもう既に考えたのですか・・」
アマンは絶句するしか無かった。シンは、直接部長の所に行くよと出かけて行った。アマンはまた自分の研究室に戻るのだった。このように、急速にシンを中心に動いて行く。目まぐるしい動きに見えなくもないものの、実際はM国の探索で、もう8か月以上掛かりきりな状態は変わらない。確かにA国での成果や、様々な解明もある。だが、それはあくまで本命の場所発見に至ったまでの経緯が最大のものであったに過ぎない。
シン達がこれ程執念を燃やすと言うのはおかしいが、僅か数年の中でここまでやってのけた事は大きい事だ。誰もがそう思っている。
丁度そんな事を思っていたのかどうか・・ケンシンが、突然滅多に自分の所には来ないシンに驚きながらも、笑顔で出迎えた。かなり広い研究室であり、スタッフも50名は居るエリアだ。やはり旧ドーム付近が一番自分には性に合っていると、ここへ移動した所だった。それまでは丁度旧近畿地方にあたる場所が開発室だった。そこへは作業班と言う色んな工作物を作ったり、植林する為の栽培室であったり、肥料をここへ格納する倉庫になったり用途は色々だ。日本の中心に位置する訳だから、地理的に見て一番利便が良い訳で、今の日本には緑が徐々に戻っているものの、海岸線は殆ど延々と砂浜が続き、陸上には山があっても緑は無い。赤茶けた岩山と平野部は砂漠状態なのだった。そう言う施設の近くは緑があるものの、この狭い日本でさえもそうなのだ。彼らは、今は動ける導線を確保し、便利な乗り物をケンシンが開発したが、この人が存在せねば、MSI飛機などは生まれなかったのだ。応用学と言うが、その幅広い知識には驚かされる程である。第2.5世代と本人は言う。そう言えば、若山主任もそうである。和良司令官べビーだとも言われるが、それこそAI制御では無いが、生体プリンタがまだ使用可能だった時の世代だそうだ。その生体プリンタを、その後において、実は使用出来ないようにしたのが、和良司令官なのでは?と言うここまで来ても、やはりこの人物が絡んで来る話になるのだ。良い面につけ悪い面につけ、多大に影響を与えて来た人物である事が浮彫りになって来るのだった。
「今日は何か?ドローン式の音波探知機は、今製造に掛かっている途中です。精度はそう期待出来ないかも知れませんが」
いつもこのように謙遜をする人だった。
「いえいえ・・その辺はお任せしていますので」
シンもこの人には敬語で喋っている、年長の者には敬語で・・それは階級でも同じだが、今は殆どタメ口で行こうと第3世代の者は決めている。
細かい事だが、そう言う部分は親近感にも繋がるからだ。
シンが聞く。




