第13章 震える
「どうにか・・と言うか、今回は俺が独断と言う形になってしまったが、皆の協力があって蜂は排除出来たと思う」
シンが言うと、
「あ・・じゃあ、今の様子を見ていないんだな?」
「え・・」
コウタがすぐ画面に肉食恐竜のエリアに切り替えた。コウタがその場所に臨場している形のバーチャル画面が現れ、拡大される。
「あ・・ヤモリ?ここにも居たのか」
数匹のヤモリが何時の間にかこのエリアに入っていたようだ。通信路は遮断しているが、蜂の死骸を回収すると言うミッションも残っているし、蜂が進入、退出した穴を塞いだαMR機も残っている訳だから、画像はそのまま得られる。シンとて全てに注視している訳では無いし、つい先ほど起きたばっかりの事なのだ。その視点が、トライアングル監視するトップ3が交替で、自然体で観察出来ている状態を作っている。今や世界中のどこに居ようが、このように瞬間にリアルタイムで見られる所に、ランの大型データベースが活躍しているのである。これはアマンとキョウが傍に居る事も忘れていたようだが、シンは何も言わなかった。トライアングルなるルートの画像なのだが、コウタは気付かない。それでも良いと思った。
「前から気にはなっていたが、恐竜エリアには2種のヤモリが居る。室長なら・・あ、お前、首班の部屋に居たのか、主査も一緒にさ」
コウタが気付いた。不思議そうな顔をする2人だが、シンは、
「良いから、室長もここに居るから続けろよ」
シンが促した。
「じゃあ、室長・・このヤモリは2種居るんだよな?」
「ああ・・最近にそれも分った事だ。通信路に居る個体は2種居る。少し足の長さと尾の長さが違うんだ」
「そうだったな、ほんの微妙な違いだが、この生体についても余り良く分かっていない。つまり、ゆっくり余り動かないタイプと、捕獲作戦で苦労したタイプと思えば良く分かる。同じような形態なのに、何故こうも違うんだろうと思っていたし、実際DNAにも大きな差異は無い。その辺は分析もしているだろうがな。そこは主査も知っているだろう?」
「ええ・・調べています」
「で・・今この動きの早い方のヤモリだと思う個体が3匹確認されたが、恰好の餌だよな、蜂の死骸を食っている」
「お・・本当だ。でも殺虫剤は、影響が無いのかなあ」
「さあて・・その辺は何しろ実証も無いからな、食っている個体がどうなるかは今後の結果を見てみよう」




