第13章 震える
「極太針の毒性や、危険度は伝わっていると思う」
「ああ・・十二分過ぎる程な」
シンも憂い顔になった。このとんでも無い強敵が居る限り、やはりM国地下への探索は出来ないのだ。どこから蜂が飛んで来るかも知れない。又、真っ暗闇の中では飛ばないだろうと言われているものの、それも絶対的な情報では無い。今は未知数の危険生物とだけ言えるし、犬達をケンと一緒にA国基地に移動させたのは、そう言う事も含まれている。
「で・・カンジと連絡をずっととっていて、大葉の成分を採取して来たオオスズメバチ変種の毒とどう反応するのかのデータを取っていた。それがどうにかまとまったんでな、見て貰おうと思って」
「おう、そうか、なら最初から言えよ、アマンも関連するんだから一緒に見るのによ」
「あ・・そうか。でも何時も一緒だと思ったから」
「アホか・・彼女は大事な研究がある。そりゃ、今回はあの場面を見たら先に調べようとはするだろうな・・」
「じゃ、彼女も?」
「一緒だよ、補佐も部長もさ。何とか解明をしたいと思っている。俺達はオオコウモリとも真正面から向き合って来た。だが、今回は知能を有しない本能そのままに向かって来る敵だ。恐らくこんな敵に遭遇すれば、人間なんと到底敵わないし、他国に出したら駄目だ。T国の猿人も、せっかく植樹をして、生息数を増やして、何とか可能な限り大地に緑を復活させようとやっている俺達の計画も全てチャラになる」
「だ・・な?だから、データを見てくれよ」
「もう見たよ。それが中和薬なんだろ?お前がチェックしているのが、通常人間に打つ量とかはな」
「ふ・・データを見ただけで分っちまったか、段々お前が凄くなって行くのを感じるよ。理解力が半端じゃねえ」
アマンが入って来た。
「あら・・もう解毒薬の開発は完了したんですね・・成程」
アマンは、一発でその画面を見て理解した。シンは、な?俺だけじゃねえよな?と言うどや顔でキョウを見つめてにやにやとしている。
「そうか・・主査の所でも?」
「カンジ班長が、『戒』に使用した効果は有る程度あったようなので、もともと神経毒とか毒蛇用の対策に大葉は考えられていたようですね。僅かですが、蛇には珍しい卵胎生のマムシなどは僅かですけど、個体が発見されているようです。ですので、その辺は勿論考慮した薬草でもあるし、生育もすこぶる良い大葉は栄養価もあるし、理想の植物であったと思います。それは毒性の強弱は勿論ありますが、要するに量的な問題だろうと思っていました。勿論、『戒』に効果があった量が、人間に見合った量では御座いませんからね」
「身も蓋も無い・・俺が出した結果が何だったと言うんだよ、そこまで理路整然的に言われるとよ」
キョウが項垂れた。




