第13章 震える
「どう見ても、アメーバ風・・一細胞のように見えるっす。つまり、これは一つの変異細胞っすか?」
「正解!良く一目見ただけでそれを導き出したなあ・・」
「はは・・たまたまっすけど、面白いっすね。再生細胞かな・・じゃあ」
「それも正解だ・・これは日本政府が長年取り組んで来た再生細胞だ。だが、普通の再生細胞じゃ無い。IP細胞などはその組織を取り出して、臓器等を培養するものだが、これはどんな組織、部位にも変化出来る細胞となる。そして、ようやく思いの方向に変異出来るやり方を近年になって見い出した所なんだ」
「それって・・実際凄い事になるんじゃ?だって万能のAIによるとてつもない、あっと言う間のシミュレーションを、今現在の旧式の器具しか無い我々がやる方法を見い出したなんて、とんでも無い事っすよ」
「そうだね・・そこが言うなれば、人間の発想なんだ。それも計算だけでは割り出せない思考力なんだよ。我々の遺伝子には、まだ可能性のある発想力とか閃きとか、眠っていると思うんだ。それを自分の中から取り出せる者、或いは幾ら優秀なその知識も記憶力も演算能力でさえも、使わなかったら結局宝の持ち腐れだ。それを神野元老は、改革して来たんだよ。だが、それはあくまで古来の知識を踏襲しただけのカリキュラムであったかも知れないが、そこで留まる事は無い。だって、思考力とは本来無限だし、人間とは失敗もする動物だ。間違ったらやり直せば良い。だけど、それが一端クリアして最初からやり直そうって言う和良司令官のような発想は、間違いだと思うんだ。確かに人類は愚かな選択をし、もう一触即発の状態だった。やらねばやられたかも知れないが、それは滅亡に拍車を掛けるだけのものでしか無い極論だと俺は思う。いや・・その選択が間違いだったと言わなくても、強者が弱者を従わせる、力と屈服で、強制的に・・そこからは自由な発想など生まれない。こんな人間にしてしまったのは誰だ?俺達自身なんだよ。だからこそ、今現存している人類は、せめて最後までこの運命に抗ってでも進もうと思うんだ」
シンの言葉はケイジの心に響いたのか?小さく頷きながらもケイジはじっとその細胞を見つめているのであった。
シンは何かをケイジに感じていた。そして、キョウの所へも連れて行く。キョウもその変装マスキングに驚いていたが、丁度特大キラー蜂の毒性の分析が終わり、その細胞に至る分析をしている最中だった。ここでケイジはこんな質問をする。
「蜂って、産卵管が変化したものっすから、雌蜂なんすよね、スズメバチの兵隊も全て」
「お・・詳しいな。そうだな、だから女王蜂を駆除しても、その兵隊蜂は産卵をする。しかし、今度は雄蜂ばかりしか産まないから、結局その群れは死滅すると言われている」
「スズメバチの毒性は、アミン類ですよね、特に多く含んでいる」
「それもその通りだ。これは特に体も非常に大きく15センチを超える。針も太くその毒の注入量も多いので、一発で致命的なものになる」
「それが数十万の単位で飛来して来たんすよね」
「ああ・・凄い数だった。見ただろう?」
「ええ・・犬が1匹後方に居たのが刺されたようだけど、助かったんすか?ケン班長とリン班長がそんな中で、捨て身で助けようとしていた・・」
シンは、少しぴくっと頬をさせる。この場合、淡々と聞こえるケイジの物言いに、感情はあるのかと言う部分だった。確かにサヴァン症候群の特定遺伝子を持つ者だ。だが、知識だけであれば、今後彼を抜擢する事は無い。だって重大犯罪を犯したのだから。そのケイジは、




