第13章 震える
「そんな事まで誰も分かって調査もして無いだろうが、俺達人間はもうとっくにそう言う史実や色んな事をAIに委ねちまったんだ。だから、何の情報も無い所から全ては始まっている。俺が実働班に初加入してからずっとそんな状態だった。でも首班達第14班の大活躍によって、そう言うベールが徐々に剥がされてきつつある。ならイリジウムと言う鉱物がそのヒントになると思う。そして、レーザー光を照射する事によって、かなりの鉱物は光を発するが、中でもそのイリジウムであれば、実験した結果がある。今から出そう。あ・これも、ショウが実に見事にプログラムを作ってくれたし、ランのお陰で大容量のデータベースが出来たから見れるんだぞ?」
カンジが自分が秘匿していた事では無いよと言う口調だが、勿論シンだって分かっている。頷くと、
「じゃあ・・幾つか候補はある。それぞれの光の強弱を変える事は可能だ。その中で、植物に優しい、動物に優しい光の波長はある。また人為的に発光ダイオードであれば、そう言う光を演出する事も可能だろう。そして、光は何も下部から照射させなくても、その上部に更に空間があれば、真下に照射する事も可能だよな?そこはどうだい?」
「いや・・思い付きもしなかったが、部分的にその上部が空洞である可能性の方がむしろ高いかも。それは人工的でも創れる。何故なら、上部に塩の採掘鉱山があるんだからさ」
シンは、改めてカンジの高い分析力を感心しながら頷くのであった。正に色んな者の意見を聞けば、今まで切り込まなかった部分からも、色んなものが見えて来る・・。
そして、かなり多くの鉱物が光ったが、熱を発するものは論外として、カンジの言うイリジウムが、一番2か所の空間に近い光だった。
「あ・これが一番近いかな・・」
「イリジウムか・・なら、恐らく隕石起因の凝縮した場所がその2か所だと考えれば、なんとなく説明はつく。だが、あくまで推論に過ぎないが・・」
「うん・・良かった。ぶらっと来たんだけど、少しもやもやっとして部分が晴れそうだよ」
「そうか・・役に立てれば幸いさ。それに、今回カイが作っていた薬草成分の効能も、恐らく補佐の所で、今後の為に増産も考えているだろうが、何しろ急場しのぎの適用に過ぎない。運よく『戒』に効いた模様だが、後遺症などの心配もあるし、薬=毒だ。これが二度目に刺されると、アナフィラキシーショックも受ける可能性もある。その辺も良く注意しとく必要があるだろう」
「ああ・・良く注意しとく。今犬軍団をA国に派遣しようと思っているんだ。派遣と言うより移住かな。M国への派遣は良かれと思ってやったが、逆に危険を招いた。俺は、もっと自由に犬達を広い大地で走らせてやりたいんだよ。幸いにも気候も非常に安定しているし、8か月以上調査した結果、危険な生体も居なかったからな。ただ、今回のような事はあるから大丈夫とは言い切れないがな。だから、塒をシェルターにして、ケンと生活を共にさせる。そして『戒』は一族の長だから、もうここで楽にさせてやりたいんだ。もう推定8歳は超えていると思うしな」
「そうか・・首班がそう言う事まで考えているのなら、安心だろうし、ケンはむしろそっちの大地の上で活動すべき人間だ」
そう言うカンジもやっぱり頼りになる、凄い奴だった。こうして、シンは活発に動いている瀬戸内海研究所兼四国支部を後にして、中京の本部に戻った。僅か10分程度の事であった。戻ると、またアマンが顔を出した。




