第13章 震える
「前にマムシが居ただろ?覚えて居ないか?」
「あ・・確かに居たな。すると、その為に野外活動の多いリンが持っていた?」
「うん・・薬草の事とリンの肥料の農業分野の知識とは繋がる。その点でもカイは初期の実働班で一緒だったが、良く2人で色んな話はしていた。大葉が何の為に植えられていたのかも、つまりは食料にも勿論なるが、その薬用成分も着目されていたようだ。それに何より、水が少なくても葉にを養分を蓄えて、水分を保持出来る。それに非常に繁殖力も強く、平和な時代なら厄介な草として扱われただろうな、ふふ。でも、この時代だからこそ、俺達の僥倖になるような植物として残った」
「そうか・・植物学者のカイは、ずっと調べていたんだな、だからもしもそう言う外敵にやられた場合、リンに・・」
「そうだ。大抵は蜂の場合は、神経毒、タンパク質を変異させる毒性だ。その点で行けば共通点があった為に効能を発揮出来たんだろうし、ケンが刺された後にナイフを入れて毒を吸い出した事も幸いしたし、唾液には殺菌成分もあるし、その毒を緩和させる効果もあった。処置が早かったから助かったんだと思う。それでも、改めて思うが、強いよなあ・・『戒』は。人間なら、七転八倒している位の強烈な痛み、或いはその痛みでショック死していたかも知れないものだったと思う」
「ああ・・・本当に凄い奴だ。一族の長だよ、やっぱり『戒』はな」
シンもしんみりとした顔で言った。やっぱり、自分の不明を詫びているのだろう。キョウは、
「首班、もう自分を責めるなよ、誰もそんな事など予測も出来ない。だってMRすら把握できていなかったんだからな。部長は探索用機が足りなかったと言って、すぐに増機して、送り込んだようだ。いままで未探索の穴全てだ。中には500円玉位のMRも送り込んだらしいぞ?ふ・・500円玉って何なの?って聞いたら、昔流通の貨幣・・使っていた金属のコインで3センチ程の大きさらしい。全面360度カメラのようだ」
「はは・・そうか。相変わらず、早ええなあ・・」
シンはにこりとする。
「だから、その辺の事を、足りなかったと思うからこそ、今回のミッションは地下都市や地底湖を発見し、今後はアバター探索をすると言う方針に切り替えた。それで良いと思うんだ。補佐は、相当気合を入れているからな」
「はは・・気合が入っているのは頼もしいが、かなりアオイに憤慨していたようだしな、何とか大人の対応をしてくれたので、ほっとしている」
「全員怒っていたさ。だから現実と遊離した感覚は、実働をさせるべきと言う意見が多かった。でも、強制はさせない・・だろう?首班」
「ああ・・誰にも得手不得手がある。それを義務付ける事は強制させると同義語、けど何でもありと言う解放感は、少し間違いだったと気が付いた。そこは、ある程度合議制でやって行くしか無い。これも人間と言う感情を持つ社会構造だからな」
「一番・・難しい難問とクリアして行く問題が多過ぎる・・やっぱり首班は大変だよ。何でも言ってくれよ、俺達にさ。出来る事はやるからさ」
「ああ・・有難うな」




