組織
「どりゃあああっ!」
よもや、シンに飛びかかる寸前の間合いにて、ライケンを裂帛の気迫で振りはらったのである。
バシュウッ!
それは、見事にオオコウモリの首を刎ねた。後続のオオコウモリは、一刀両断にされたそのオオコウモリの姿を目の当たりにして、一瞬躊躇した。又他のオオコウモリは網周辺でパニックになっているようだ。
「今だ!シンお前も早く!」
ランが声を上げると、シンは、他の誰よりも驚く早さで、走るように網を駆けのぼるのだった。
「うおっ!シン・・お前、そんな猿見たいな芸当まで」
ランが、シンの又隠れた身体能力の高さに驚きながらも、にやっとする。
シンが到着すると、シンとランのライケンを十字に穴に差し、オオコウモリが入ってこれ無いようにした。山切りの木には近寄らない筈だ。大群で今はこの網内に侵入も出来ないから、それはそれで、捕獲用の網と言えども、抑止になっている防護機能が働いている。所々破られては居ても、ここは狭い通路のような場所なのだ。それは圧倒的不利、絶対言絶命状態であっても分かっているから、万が一の為にもそれを所々囲い込んだ鹿が逃げないように、二重に施した場所もある。相手が生体武器で知能があろうとも、ここは人間の知恵やそれなりの策が役立っているのである。
そして、山切りの木の下に降りると、周囲が8メートル円状に広がり、光が射していた。どこは地上の穴と繋がっているようだ。驚く景色に、エライ班長達メンバー全員が驚いた。シンもランも発見したものの、こんな感じになっているなどまるで予備知識など皆無なので、驚きの余り言葉を失い、きょろきょろとしている。
「これは・・?」
エライ班長がシン達に聞く。シン達に聞かれても今言ったように分かる筈も無い。しかし、経緯は説明できる。
「偶然ですが、逃げ場を探している中で、この山切りの木の穴を見つけたんです。そして、こんな空洞が開いているのも不思議ですが、下を覗くと、空洞があって、ここに逃げ込む事が出来れば助かると思って、皆を呼びに行きました」
「そうか・・そう言う事で・・でも、助かったよ‥本当に危ない所だった。間一髪であった」
シリマツ官吏が、少し冷静になって言う。シンが、言葉を付けたし、
「この木だけ、何か違和感があって、上を見上げました。そこで穴が開いている事を発見し、ランと覗きました。不思議な感覚なんですが、これは人工的に作られたような気がしました」
「ふうむ・・まさしく、空洞は直下に降りる梯子があったし、どう見ても自然にこんなものがあったのでは無く、人工的に作ったものだ。偶然にこんなものがあったとは思えないな」
「勿論、自然には出来ないでしょうね。人工物だ。穴と言うか、山切りの木自体がイミテーションだ・・それも精巧な・・何の為に?と言う疑問も、今言うのは、バッドタイミングなのだろうが・・」
シリマツが言う。すぐにこの木を観察をしていたようだ。エライ班長が続ける。