第13章 震える
「俺がやるって言ってはいないだろ?発見した。今は・・それでここへ来た意義があった。それだけだ。M国突入を躊躇した中に、キラービーの存在があった。それは、まだ他にも仕掛けがあるのかも知れない。その辺の対処もしなきゃならないのに、いつまでもここに居るつもりだ?それこそ、そう言う暇を持て余している奴らが、アオイじゃないけど、何人も居る。そう言う奴らをもしそう言う事なら、新部署を創り派遣してやれば良い。余程優秀な人間ばかり発掘しようとするよりも、一発芸のヲタクなら相当数居るんだからさ。データベースが、これならありそうだって、俺は今思っている・・どうだ?」
「おい・・」
シンとダンが絶句した。妄想に近い発想だが、それは咄嗟に出て来るからランなのだ。エイジが、うんうんと納得している?シンとダンが顔を見合わせ、苦笑いするのだった。
そこへ、またM国地上基地から連絡が入った。カイだった。
「どうにか、大葉の抽出液が効いたようだ。『戒』は助かる。でも、俺はケンに言ったが、『戒』はもうあいつに出会った時には5歳を超えていた。今8歳を超えた所だろう。確かに遺伝子操作されたようで、更に変異した突発遺伝子の犬だが、現役を退かせたらどうだって言った。母犬の『愁』もそうだが、現役を退かせたらどうだ?もう『銀』と言う立派な次代のリーダー犬が居るし、俺は思ったんだ。もう胸が痛くなる程必死なケンを見ているとよ、犬達は重要だと思うが、外は今危ない・・何か考えてやってくれ」
「おう・・助かったのか・・良かった。カイ、それは俺達も気持ちは同じだ。ずっと一緒にやって来た仲間を危険な眼には遭わせられない。考えて見るよ。カイ・・お前が居て良かった、有難うな」
シン達はほっとして喜ぶのだった。そこへランが、
「あのさ・・犬軍団はこっちに連れて来たらどうだ?こっちも同じ砂漠地帯だけど、危険な生物は皆無だ。シェルターを犬達の移住空間にすれば?安全だし、安心だろ?」
「おおい・・ランは次々に発想を飛ばし・・なあダン・・はは、でも有り得るかも。ここへ山切りの木、大葉が育たないって事は無い筈だし」
シンが言うと、はっはっはとダンも笑った。
「良し・・ケンに派遣を『戒』が全快したら命じる。こっちに移れってな。オオコウモリ軍は、リンに、もう少し増派させるように伝える。少なくても制空権は確保しとかなきゃな、危なくて野外活動も出来なくなる」
何事も即断即決である。つまり、ここの施設には危険がほぼ無いとシン達は感じているのだ。それも勘としか今は言いようがないが、ここまでの経緯を見れば、厳重な守りを施す仕掛けが全く無かったと言う事だ。彼らは、『戒』が助かった事で安堵していて、笑顔になった。それはケンだけでは無い、皆がどれだけ犬達を愛し、犬達も人間と共生し、共にここまで数々の活動をして来たのだろうか。彼らには何度も助けられた。だから出来るだけ今度は安全な場所で、且つ彼らにとっても、この広大な地は新たな活動の場となるだろう事を確信めいた日になったのである。




