第13章 震える
「そうだったな、こっちに集中しなきゃいけないのに、俺は動揺している」
「それは、同じだ。でも、集中力が切れたのなら、ここまでにするか?」
「いや・・ランが逆に集中している。ここは引けないだろう。こいつは今の出来事で余計にその火を着けちまったようだ」
エイジもそうだった。2人は、完全にこの扉に集中している。鍵は掛かっていなかった。そう言う類の仕掛けでは無いようだ。ブラックライトがはっきり示しているように、一番時計回りで左側の扉を開ける。
「おおっ!」
短い声が挙がった。そこには、各種計器類が並んであった。つまり、一種の研究室のよう。広さは12畳位なので小さな部屋ながら、所狭しと並んである。勿論電源が入っている筈も無かった。
「ここから運び出すのは難儀しそうだな、広場までは何とかなるが、そこからシェルターの階段までは無理だぞ・・」
「そこから運んだんじゃないだろう。つまり、ここも一種の地下通路だ。どこかの扉がその通路だと思う」
「地下通信路じゃないわな、勿論。せいぜい地中の10M程度だ・・いや、もう少し深いか」
そう言っているとランが、
「そんなの全く気にしなくて良いよ。バラバラにして持ち運べば良い。月でやっている」
「ぷ・・お前だけは・・で?ラン、何だと思うんだ?この機器類は」
「そうだな、見た所分析器の類だろう。それもそう大きくは無い。全バラでも構わないぜ?こんなの簡単に組み立てられる。むしろ、そっちの方が良いよ。部品全てが分かるからな」
「お前に任せるよ・・はは」
ダンも呆れたように答えた。
「じゃ、次へ行こう。今日は全ての扉を見たい」
ランは、その隣の扉を開けた。
「ん・・?」
今度は首を傾げた。何もない空っぽの部屋だったからだ。ただ、広さも同じ位だ。
「おかしいな・・部屋である限りは何か置いてある筈だが・・」
それはシン達も同様に感じた。何もない方が異常なのだ。




