組織
「皆を呼ぼう!とにかくここへ避難する!。足場も少しロープで確保しよう、ラン走って皆に!」
「おうっ!」
ランがすぐ走り、シンはロープを梯子状に組み立てる。彼の決断は早かった。何でここに、こんな人工の構造物が、山切りの木そっくりのイミテーションみたいにあるのかは分からない。しかし、ランが予測したように、地下坑道と繋がる何かであるらしいと思えるのだった。
シンも簡素なそれが出来ると、ランとは別のメンバーに告げる為に後を追い、走った。もう一刻の猶予も無い状態だったのである。網は、もう既に数か所が破られているが、まだオオコウモリの侵入は許して居なかった。しかしもう風前の灯の危ない状況で、更に深刻となっていた。
「こっちだ!皆、こっちに走って来い!逃げられる所がある!」
「何っ!」
その二人の声で、メンバー達は躊躇無く走ってきた。もはやここが死地と覚悟していたからで、体力も限界に近かった。どうにか全員揃ったようだ。
「ふぅふぅ・・もう駄目かも知れない、覚悟を決めてくれ」
エライ班長は、武芸百般と言っても、この中では一番の年長だ。年は知らないが40歳を超えているだろう事は確実だ。しかし、シンは言った。
「何を言っているんですか!死ぬのなんて嫌です!だから、こっちに呼んだんですよ!」
「でも、シン君。もう怒涛のオオコウモリの攻撃によって、我々が防御していた3隅はもう駄目だ、穴も開けられた。もうすぐこっちにも攻めよせて来る」
それは他2つも同じ状況だった。密度が濃い、薄いはあっても、オオコウモリの牙がこんなに頑丈で強いと言う事を知ったのは初めてだ。数10頭・否、100頭位はライケンで倒したかも知れないが、そんな数等氷山の一角どころでは無かった。圧倒的無数の攻撃なのだ。
「説明している時間は無い!こっちに来て下さい。急いで下さいね!登って!早く!もう時間が無いっ!」
ランが木の上から手招きする。
「あれは・・?」
「判断する時間が無いと言っているだろう!全員早く!」
シンが、大声を張り上げた。オオコウモリの一頭が、やはり網を破り飛来して来た。シンが、網を登らせるメンバーの殿を務めた。ライケンを大上段にシンは構える。もうこの一頭とは闘わざるを得ないのだ。後に続くオオコウモリは、集団に押され、何かパニックを起こしているようだ。狭い網を抜けるには、数が多過ぎて突破出来ないからだろう。だが、彼らとて一端侵入したからには、後から押し寄せて来る大群に押されて身動きが出来なくなるのだ。その点はやはり、人間とは違う野生的な攻撃だろうが・・