第13章 震える
ここで茶番は終わった。もうとっくに彼らも日本に戻っていた訳だ。それを巧妙に現地に居るように演出しながら、ついでにネズミを炙り出したのだ。公開処刑のようなもので、これも全て組織内に公開している。つまり、彼らの存在は公にされたと言う事だ。これ以上の罰は無い。しかし、微塵でも彼らに危険な動作があったなら、間違い無くマコトは射殺していただろう。それをシン達がバーチャルの中で話し合っていた事も含め、組織の在り方を再々再度になるが、引き締めたのであった。
「ふう・・とんだ茶番になっちまったな」
「ふ・・ある部分骨のある者だと期待感もあったんじゃねえのか?」
ダンが笑う。
「あったかも知れないな。でも、思ったより全く低次元だった」
「俺が居たら、間違い無く射殺していた」
ランが言う。
「おいおい・・だからお前は参加させなかったんだ。良いか、確かに重罪だ。だが、今まではAIが裁判を行っていたし、組織の黒服にはそう言う役目もあった。それが無くなり、何度も引き締めも図って来たものの、すぐ色んなものが不便の中にも少し便利になり、外の脅威も去った事で、緩んで来ているなとは思っていたし、俺が半年以上も組織に張り付いて色んな声も吸い上げて来たし、不安や不満の声もあった。働くと言うのは、ある程度の満足感も得られる部分もあるが、単調だ。その興味をやっぱり野外活動で得た情報に求めようとする。そう言う事なんだよ、大本はな」
「だったらさ、徴兵制度じゃ無いけど、野外に出してやったらどうだ?実際に思っているようなものじゃない、悲観的な状況だと思わせてやったら良い。特に南九州の火山地帯なんて間近で見たら、首をすっこめるぞ、恐らくな」
「亀みたいにかい!」
「はははは・・突っ込んで来るよなあ、首班も。じゃあ、ケンの所も寂しいだろ、かなり人を送り込んでやっぱり基地を充実させなきゃな、犬軍団も広くて良いよ、あっちはな」
「寂しくねえのか?相棒があっち行ってても」
「大丈夫さ、すぐに又行く事になるだろうしな」
やっと又こちらのいよいよ場面になるのであった。この間、どうやって入るかの良い時間稼ぎになったようだ。あっちはマコトが見事な采配で仕切ってくれた。彼らが留守の間でも十分にマコトが本当の補佐をしてくれるだろうし、神野黒服、黒川主査がフォローしてくれる限り大丈夫だと思った。
「ふふ・・」
シンが急に笑った。




