第13章 震える
「分かっているさ、そのじゃれ合いって言うのも、必要なコミュニケーションだって分かって来た所さ」
ダンも、苦笑でそれを返す。エイジは、異才、天才型が集結している第14班はこれがあるから非常にまとまっているのだと思った。
「ここだ・・もう2か所も見つけた」
ダンが示した場所は、肉眼では殆ど見えないレベルだった。以前大蛇を運ぶ時にマコトが、ラッピングに空気穴を施している事を見抜いたが、同様にぱっと見では分るようなものでは無かった。そこに明確な継ぎ目などは無く、境に線も入っていなかったからだ。
「ほう・・良く見つけたな・・これでは分からないよな、普通は・・」
「だろ?・・だが、この巧妙かつ繊細な作業を俺から言わせれば、最後の最後の詰めまで他国はしないんだよな。そこが病的とも言える日本のこだわりとは違う部分だ。僅かに色が違うんだよ」
「その違いも、カラーチャートで言えば、数千ある段階での1つか2つの違いだろう。良く見つけたよ」
「ふ・・それがお前には分るから、やっぱりリンとお前は、全然違う眼を持ってやがるって事だよ」
「何を言っている。見つけたのはお前らじゃないか、それに何かあると徹底して調べた段階で、お前の分析が的を射たって言う事だ。で、どうやって開けるんだ?格納庫か?通路か?ここの下は・・それとあと2つは側面か?だとしたら、最初っからこのシェルターは埋まっていた事になるぞ」
「ああ・・それが当初埋まったものとして、扉が開かなかった理由であろうと思っていた部分だ。でも、この側面2か所の仕掛けこそ、最初から扉は内からは開かなかったんだよ。それも5人の者達には知らされていなかったと思われる」
「軍と言うか、中枢の幹部だろう?それもかなり上のクラスの・・」
「だよな・・中にある装飾品、設備からしても一般国民が入れるシェルターじゃないし、その当時のブルジョアと言うか、そんな特権階級・・資産の有無の資産など無意味だった。何故ならば、経済なんて言うもう流通で成り立つ時代じゃ無かったんだから」
「ふむ・・その辺の根本がまず大事だったな、分析と言うのは、副首班から順番ってものがあるだろうが・・その通りの言葉を踏襲すれば、そうなる」
「ふ・・やっと俺がそれに従って、分析しているんだって言う事を分かってくれたか。首班だからこそ、その辺を全部分った上で先に言葉が行くが、他の者には伝わらないぞ?その辺は、ランもとても優秀な奴だが、お前の舌足らずだ。お前が、突出し過ぎていると言う自覚をもう少し持てよ。じゃないと、着いて来れなくなる。議論が嚙み合わなくなるからさ」
ダンはこう言う時にも、シンを補佐する言葉を発する。こんなにも周囲に気配りが出来るやはり右腕の存在で無くてはならない男こそが、ダンなのだ。ランは黙っていた。友人で居た時でもシンは殆ど自分を出さなかった。それが今の首班と言う立場になって、どんどんその能力を解放しているが、やはり突出したその能力が、ラン自身の行動を責める羽目になるのだ。ダンはランだからこそ、信頼と絆によって理解してくれるが、他の者にも同様にその考えを押し付けたら、どこかで反発を産む事を心配してくれていたのだ。それがダンの友情の言葉だった。ここで、この場面でもダンは指摘をするのであった。




