第12章 ついに存在を
「私も、機械に負けてたまるかって気概でずっとやっています。本当に正直分からない事ばかりで、今はどうにかこうしてデータベースと言うものがラン班長のご活躍によって、手に入りましたが、一つ検索するのにも、旧型コンピュータ・・と言っても私達が物心がついた時からこれしか無かった訳ですから、過去にどのような優れた機種があろうとも、実際全てAIを経由しなければ使えない代物であり、宝の持ち腐れでした。産業資料館にあった機種を見るたび溜息をついておりました。でも、そこまでもう人間が扱える代物ではとっくになっていたんですよね。30Ⅾプリンタの一部機能を今我々が使えるようになりましたが、DNAプリンタもあるものの、神野黒服がこれをストップされた。深いお考えもあっての事だと思いますが、それから人増員計画もあるのにも関わらず、補佐も随分苦労されて、とうとう今の状態になりました。だが、そこから何とか出来ないかと言う機運が芽生えて来たタイミングだったように思います。だからこそ、私も自分の持てる全てを傾注しても、こんな機械に勝ってやろうと思ったんです」
シンはニコリとして、
「それが神野イズムなんすよね。そうやって人類が自立し始める再スタートを遅いかも知れないけど、神野黒服が中心になって、境域のカリキュラムを改め、新たな体力・能力訓練をし、機械に使役されるのでは無く、又機械に管理されるのでは無く、人間が主であった文明に戻らねば、やはり同じように滅亡は加速すると考えられたんです。それがようやく今浸透し始めていて、このように、命令されたから考える、行動するんじゃなくて、自分が考え、それを実行出来るような形で歩み始めたんす。今この場でそう言う話が出たからこそ、俺もようやく自分のやって来た事がそうだったのかと思うんすよね」
アマンが、
「良く最近になって私も思います。特に首班と一緒に任務をするようになってから、我々の求めている世界とは、共生では無いでしょうか」
「強制・・では無く、矯正でも無く共生かあ・・成程なあ・・」
駄洒落を、バッドタイミングで言う空気の読めないランに、シン達は苦笑い。だが、この男の能力はやはり計り知れないものがあった。こう言う人材が居たからこそ、少なくても前に進めたのだ。あれから1年もしない間に旧ドームは崩壊した。オオコウモリに襲われ、猪、野犬に襲われて彼らの大半は、食を自分で摂る事も出来ず、餓死し、死んだだろう。そして共生ならぬ恐らく長い時を経て、山切りの木、大葉を中心とした森林が徐々に増えて行き、少ない種ではあるものの動物達が、まずは北九州を席捲しただろう。僅かに身体を鍛えたシン達が生き延びたかも知れないが、やはり生殖能力を失った人間に先は無い。
こんな事を思い浮かべながら、その時ダンから連絡が入った。




