第12章 ついに存在を
「別に試すつもりも無かったがな、俺はこの部分をじっと眺めていた」
シンが指さした。誰も底の場所は注視していなかったから、分からないものの、
「この場所には5つの大小の穴と言えば良いのかな、30センチ程の穴で、空気の流れが確認出来ている。つまり、この先は空洞が続いていると言う事だ。どんなに大きな空間があろうとも、酸素が無きゃ、動物は生きられない。でもさ、水がありゃ、酸素と水素の化合物だ。分離出来るし、宇宙空間でもそれをやっている。水素自体は燃焼もするから爆発する言う観念もあるがな、人体には無害だ。それに、水素分子は非常に小さな分子構造を持っているため、細胞膜をすり抜けて隅々の細胞まで浸透する事も出来る。細胞を老化させる活性酸素と結びついてそれを無害化する事が出来るんだ。よって働きが阻害させていたミトコンドリアが活性化され、老廃物の排出や資質の代謝が高まる利点があるんだよな、だから俺達は常に水素を取り込んでいる。それがドリンクの中身だよ」
「そんな事まで知っていたのか、首班は」
「ふ・・専門家の補佐を前に、知ったかぶりを言ってしまったがな、その水素が多くその穴から出ている事を知ったんだよ、最新の情報でな、だからずっと注視していた」
「そんな事まで気付きもしなかったよ・・そこで、何が起こるのかな・・」
「分からない・・だけど、この空間の空気が清浄に保たれている事にも繋がるんだろう。それが、ランの言う恐竜空間の酸素と水素・・生体だし、植物もあるから二酸化炭素と比例しているのかも知れないが、恐竜時代の酸素量は多かったと言う説もあるが、現代とそう大きな変わりは無かったと言う説もある。どれが本当の情報かは知らないが、ここまでの大蛇にしても恐竜にしても実際この空間には存在する。それが何かはずっと考えて来た事だ」
「そこにずっと疑問を持って来たんだな・・」
そう言ってコウタは、自分が気付いた場所を注視し始めた。他の者達もようやく、何を自分達はすべきか、注視すべきかを眺め始めたのである。それは本当に秒単位で変わって行く。主要な柱や構造物が動く事は無いが、その画像一つにしても1時間前とは全く違っている事に彼らも気付き始めていた。鮮明になっているのだ。そしてデータは積み重なって行く。先に本部に戻ったメンバー達が情報をデータベースに落とし始めたのである。シンはそれをどうやら待っていたようだ。
「随分、短時間に積み上がって来ただろう?俺はこう言うのを期待して待っていたんだ。これこそ生きた新鮮な情報だからな。それに俺達が観察して来たデータも皆が照合している。その点はショウが実に、明確な実証、不明確な検討要項、駄目な情報とソフトベースで自動的に切り分けている。でも破棄はしていないんだ。どこかに落としていて、今後参照する情報を拾い上げる事も出来るようになった。本来ならこれがAIやその端末の仕事なんだろうが、ここまで出来るようになったんだよ。旧のシステムでな。画期的だと俺はこれで今は十分だと思っているし、多くを望んじゃいない。後は眼を信じ、体感したもので自分も磨きたいもんな、機械に負けてたまるもんかよ」
「首班・・お前は、やっぱりすげえよ」
コウタが横でそう言った。立ち位置が彼程しっかり出来ているものは居ないだろうと思った。どこかにやはり何かが隠されている。それも大きなものだ、コウタは思った。
ケンシンが横で言う。




