組織
「シ・・だってそうだろ?さっきも言ったように、俺達の表行動と、本当の狙いは別にあるような気がしているんだ」
「情報的には?」
「山切りの木を200M間隔で四角に区切っている。俺達の知らされていない裏MAPが存在して居るんじゃないのか?地下坑道は、今まで存在自体を否定されていない。だが、誰にも、どんな目的かも一切知らされてはいない。なら、地上で出る意義と、或いは地下で無ければ出来ない何かがあるとずっと思って来た」
「そうか・・成程」
シンは無言で頷いた。それは、推理が合っているような気がしたからだ。シンにも似たような指令が来ていたのだ。ひょっとしたら・・シンはそこで、秘密のメンバーしか分からないサインをランに出した。左手の甲を上に向け、そしてくるくると二度それを繰り返した。そして、天と地を指さした。
「お前・・」
ランは、びっくりした顔でシンを見つめる。
「分かると言う事は、ランもそうだったんだな・・」
「シン、お前がそうではないかとずっと思っていた。しかし、これはシークレットなんだ。けど、そうだよな・・今生きる選択をしなくて、ここでオオコウモリ如きに殺られたくは無いぜ、俺もさ」
二人は、仮面の裏メンバーだったのだ。山井とこの3人が一緒だと言う事がこの危機的状況で分かったが、もはや網内は風前の灯であった。エライ班長、シリマツ官吏、マコト副長以下他のメンバーの必死の形相を見ても、何らここへ来て、彼らには他に知り得るものは無いと、シンとランは判断した。たった200Mの囲いの中で、あっちに走ったり、こっちに走ったり、今にも破られそうな網に顔を突っ込むオオコウモリに、ライケンで切りつけるしか無い防御に必死だった。
「ラン・・俺と一緒に来てくれ」
シンの能力は、瞬間画像認識能力だと言っているし、公言もしている。シンはこの網の中で正確に9本の山切りの木の特徴や、大きさ等を把握していた。それに何の意味があるのかは分からない。しかし、東南角にある一本の木の前にランと立った。他のメンバーからは離れていた。視界的にも他の者達からは死角にあたる位置だった。ここにはオオコウモリは襲撃をしていない。少し冷静になれた。
「ラン・・お前もシークレットメンバーだったのなら、能力を隠すな、俺はこの1本に違和感を持っていた」
「一本、一本山切りの木が違っているが、俺には・・ん?」
この木の周囲にはオオコウモリが殆ど居なかった。正確に言うと、この100M正方形状の圏内は、最終的に鹿を追い込む最奥地になっており、四等分の区画の一番今オオコウモリが飛来して襲撃を受けているのが、この区画の右側1000M区画内なのだ。後2つの区画内にもオオコウモリは襲撃しているが、ややその数が少ない。集中的に一番襲撃の多い、区画で6人、2人、2人と分かれて防御している状態だった。そしてシン達も2人で今この区画の角の木に入る訳だ。それぞれの区画には一つずつ角の木がある。確かにその角になる四本の山切りの木は、若干幹も太く、木も高かった。