第12章 ついに存在を
ランが言うと、よしとシンは再び画面を出した。広大な地底にバーチャルで臨場しているように、全員が吸い込まれた感覚だ。ぴりっと雑談とは違う雰囲気になった。多分、ランが言いかけたが、その中に重要度に繋がる何かがあるのだろう。それが量子コンピュータの存在で、つまり最新的AIとは違うものの、旧日本政府とⅯ国が秘密裡に開発していたと言うのなら、正にそのシステムを利用したものなのでは無いか。少なくても新時代の日本政府のAIであれば、その量子コンピュータに否定的だったと言う科学者達が、新たなシステムを構築した。即ちそれが世界大戦を誘発するような開発競争に繋がったのだと、近年の・・つまり、ランがA国月基地内で回収してきたファイル内で見つかったのである。勿論、それをオープンなデータベースには入れていない。コピーした別のコンピュータに入れているのだ。シン達が使っている旧式コンピュータは、答えは一つだ。量子コンピュータは幾つもの答えを同時に出し、その中で答えを拾い出す。確かに旧式コンピュータより早く演算も出来るし、連結式のように巨大な設備を要しないでもいけるが、日本はそれから脱却し、そう言うAIでは、誤った理解・判断が何時いかなる場合に誤作動を誘発すると言う懸念から、全ての部品を純国産製に変更したのだ。結果的に量子コンピュータと変わらぬベンチマークとも言うが演算速度は飛躍的に上がった。それが今使用しているものである。そして耐久年度も100年は裕にあるからこそ、今現在使用出来ている訳だし、20Dプリンタが使用可能となった背景にも、ラン、ショウの独自プログラムが貢献をしているのだ。そして、正にその否定した筈の量子コンピュータがM国にあるのだとしたら、無人でも全てのシステムは稼動可能となる。その可動範囲の中で、例えば、防御機能があれば、確実に攻撃もされよう。ただ、今現在において無人MRが攻撃されては居なかった。それでも慎重にならざるを得ないのは、何があるのか全く読めない事だ。この秘密ベールを破ったからには、何かがあると言う事だ。
「中央に一際大きな土柱がある。そこに窓らしき無数の穴があるが、その穴からMRが侵入した事は?今現在の画像では、この地下都市の全体像は見える。勿論、隠し扉も無数にあるのだろうし、何らかの妨害磁場?が、それを可能にはしていないと思うが」
コウタが言う。ここはケンシンがここまで解析して来た結果をして、
「窓は実はコーティングされていて、外部とは遮蔽状態です」
「あ・・そう言う事であれば、迂闊にこれを破って侵入するのは無理でしょうね」
「補佐・・随分乱暴な方法論を呟いたなあ」
ランが突っ込んだ。
「いやあ・・方法論は量子コンピュータと同じで、一つの答えじゃない。あらゆる選択肢の中でベストチョイスをするんだからな」
「は・・その存在を確かめる為に・・逆にシステムが稼動しているとして、どんな判断をすると言う答えによって、こちらの行動を決めようと言うのかよ」
「まあ、最悪手だとは思うけどさ。それも一手には違いない。中が見えないからこそこうやって慎重にならざるを得ない訳だ」
「それは、そうっすね。部長、この空間に飛ぶMRって他の機種と違いはあるんすか?」
エイタが聞く。




