組織
「全部使ってはいけない。その時が我々の完全敗北になる!」
シリマツ官吏が、状況を冷静に見ようとしている。しかし、どんな策士であろうとも、この数、この大群で昼夜なく攻め込まれれば、どうしようも無い。大葉は効果が確かにある。しかし、それとてもそんな臭気をかき消す程の大群であれば、臭気はその大群の体臭に薄められ、かき消されてしまう。まさか、こんな大群が一気に襲って来るとは思いもしなかったのだ。彼の顔色も真っ青になっている。呟くように・・
「しまった・・我々の予想を遥かに上回るやはり高い知能を持っている。どんなこのオオコウモリを上回る相手が来ても、この物量作戦には勝てはしないだろう。まして、今の我々には、前々時代の武器しか無いのだから・・」
シリマツ官吏もとうとう弱音を吐いたのだった。シンは考えた。何故、8か所の通路と監視塔を5キロ+300M延長をしたのか・・監視だけの目的とは思っていなかったからだ。そして自分だけに与えられている、まだシンもその秘密を明かして居ないが、理由がそこにあるのでは無いか・・ランが横に居た。それは、相性だ。互いに力量は分かっているし、息も合う。
「ラン・・お前の情報の中で、途中話のままで終わっているが、地下坑道って言うのは少し分かっているのか?」
「いや・・人工的なものは殆どファイルの中には無かった」
「そうか、極秘の資料中でも相当高いシークレットなんだろうな」
その二人の会話中にも、
「うわっ!突進して来た中で、網を食い破ろうとするオオコウモリが居る!」
甲高い声がその話の途中で聞こえて来た。確かにこれだけの大群だ、又鋭い歯でがりがりやられたら、網は破ける。爆竹の音が聞こえる。吹き矢も放っているが、1頭、2頭を倒したとて、全く多勢に無勢なのだ、いずれ倒されるのを自分達人間が、完全劣勢で網に追い込まれ、窮鼠猫を噛む状態にて抵抗しているだけの現状でしかなかった。シンは、
「ラン・・絶体絶命とはこの事だ。知っている事は、全部話せ。俺も必死で考える。この際、自分がどんなに密命を受けていたとしても。生き残る道を探すのが先、一刻も早くそれがあるのなら脱出・或いは防ぐ手段を見つけなければならない」
「ああ・・」
ランも、シンが何か他に密命を受けている者だと分かっているので、ここでそう言いながらも、シンと共にオオコウモリの襲撃を見ながら、網に頭を突っ込んだ個体には、ライケンで切って行く。真っ赤な血が飛びだし、その辺が血糊で埋まって行くが、キリが無かった。ランが、少しシンにやや小声で、
「この作戦で仕掛けている網中には、恐らく地下通路があるような気がしているんだ」
「何!」
シンが今度は少し高い声。