第11章 次々と・・
「君達は、3機のMRにそれぞれ追加で必要器具を送った。ケン班長が居るから、陸上の監視は任せているが、君達は勇猛果敢な隊長が勢いにまかせて突進する事は阻止してくれ。補佐役としてここからは、あくまで冒険じゃない、探索、検証の場である事を自覚してくれ、良いね」
「はいっ!」
ケンシンが再び苦笑いした。この人は読み切っているのだ。その人の性情を。先ほどの重大な発言?にも繋がるマコトの悪い部分での腹にあるものは、全て吐露してしまう、軍隊であれば自滅しかねない重大な作戦の計略、を軽々しく吐露するような者は、幾ら優秀でも使えない。4番バッター、エースでピッチャーであっても、試合を指揮出来る監督にはなれないと言う事だ。だから、この優秀な2人を・・そこにも感心しながら、ケンが犬軍団を組織し、この大地で何をやろうとしているのかも注目すべきものであった。何かがやはり起こりそうだ。まだ、誰にもそれは何かは分からない。
「では、入る。慎重に行くぞ、2人とも」
「はい!」
ここは、隊長らしく気構えは十分だ。それに初ミッションの二人が、もしも危機に陥れば、身を挺して2人を助けようとするだろう。それが故にマコトの存在がある。シンはこのマコトに絶大な信頼を持っているし、マコトもシンに対してそうだ。人それぞれ・・組織が機械的、歯車的なものになってしまった、旧時代、旧思想により管理社会になってしまった人間社会の中で、それは人間の思考・感情を奪ったのだ。そして人間が破棄しなかったものは、征服欲、独占欲だった。屈服させる支配欲のみが人間に残ったのである。その中には、人間が築き上げて来た互助間での関係を重視する社会がある。つまりその中には、人を慈しむ、弱者に手を差し伸べる。小さな子には愛情を持ち接する。誰もが助け合う精神そのもの、それは『恕』と言う言葉にも表される、それを失った。だから、男女間の愛情は薄れ、互いの信頼感を無くし、競争原理のみ残ったのだ。つい最近までの旧ドーム内の黒服達の暗闘を見ても、派閥が存在し得る人間社会は、何時転ぶかと言う危うい関係で長い歴史を刻んで来た。裏切りは日常、騙すのは必然、平気で嘘をつく。そんな人間同士が、果たして恒久的なる社会が築けるだろうか、それは否だ。その矛盾なる互助関係の中でこそ起こり得る戦争は、誰かが終止符を打たねば収まらなかった。それを和良司令官が行ったとすれば、何人殺したかなど問題では無い、それは同じ行為なのだ、多寡の話では決して無いのだからその事での問答も無用であろう。そんな事を百万遍話し合ったとしても、交じり合う事の無い互助関係ならば、むしろ人間など地球上から消えれば、純粋な食性ピラミッドの動物社会が地上を席捲する。
シンの脳裏にあるものが、どんなものであるかは誰にも分からない。しかし、少なくても今、必要なそれを持っているのはマコトなのでは無かろうか。




