第10章 波乱
「あの・・よろしいですか?少し」
「あ・・ああ、勿論っす。ここは本部だからこの場に居る限り、業務態勢だから、ふふ」
「3日間の会議を終えられて、お疲れと存じますが、首班、ラン班長が資料を下さったんですが、何かお聞きになりました?」
「あ・・いや、さっき何かメモリカードを渡されて、後で見とくわと言って机の中に」
「あ、それならまた見られてから、お聞きします。私は今からエイジ副班長の所に行きますし、あの・・首班は忙しいからと来室は断っておきましょうか?今日はゆっくりされた方が良いと思いますし」
気遣いのあるアマンの言葉だった。シンはそれなら、今日一日は、ぼおっとしとこうと言ってその言葉を受け入れるのだった。アマンが首班室を出ると、本日面会不用・と言うカードを部屋扉に掲げた。丁度リンが顔を見せたが、
「ありゃ・・そうか。シンも疲れたんだろうな」
そう言って出かけようとするアマンに、
「あ・・主査。ちょっとだけ良いかい?」
「ええ・・リン班長。あちらで・・」
幾つもの会議室的な部屋はある。どこでもちょっとした会議が出来るし、そこにもPCは置いてある。本部の誰もが使えるようになっているのだ。リンがアマンに用事があると言うのは、初めての事だった。
「すまないね、出かける所だったんじゃ?」
リンは鋭い。感覚はシン以上のものがある。アマンはにこりとしながら、
「いいえ、とても良い機会を頂けました。エイジ副班長の所に行くつもりでしたが、時間を決めていませんでしたので、全然大丈夫です。それよりお話出来る事が嬉しく思います」
「あは・・それは歓迎されているんだ。じゃあ、俺から言うよ、主査は変幻自在になる細胞の事を発表した。つまりアメーバのような形態だと見ても差し支えないんだね?」
「ええ・・端的に言ってしまえば、そう言う単細胞です。ですので、核は一つです」
「じゃあ、植物の遺伝子情報も組み込める可能性もある訳だ」
「はい・・ですが、それはその後の処理の話ですよね?」
「あ、うん。それだけ聞ければ良いんだ」
リンは、それだけで納得顔になっていた。何か思う事があるのだろうが、敢えてアマンも質問をしなかった。逆にこう質問をする。




