第10章 波乱
「皆、ど偉い才能を隠していたんだなあ」
「俺達が、それぞれのセクトで別々の研究やら俺も情報室だなんて、結局組織の人間を監視するとか、まあ・・今思えば神野元老が、組織全体の人数、セクトなど一番良く分かる部署に意図的に配置したとは分かっているものの、その当時の若松部長にはそれは全く伝わる事なく、また俺自身も実際何の目的かも知らされなかったからな、逆にそれを分れと言うのも酷な話だろう?他のメンバーだって、大体はそんな所だ。それに実働班では同じ目的で行動していたが、それすらも何を探しているのかも分からなかった。そんな組織って実際ある?無いわな・・もう無茶苦茶だった訳だからさ」
「はは・・言い得て妙だ・・でも、今回の会議ではどんどん素晴らしい案が飛び出て、やっと何か、本当の組織の持つオープンな形が出て来たように思う。それがプロジェクトチームの再編とか、異業種交流と言うのを首班が積極的にやって来たからだよなあ」
「まあな・・俺も個別の会議を重ねて数か月やって来たが、知らなかった部分が一杯出て来てさ。実際、どれだけ隠密班、秘密研究などがあったんだよって思った」
「それだけ旧ドームそのものが研究施設だったと言う名残が強く残っていた訳だよ」
コウタも大きく頷くのであった。
「ここまでも全員周知で公開披露して、不正アクセスについても厳しく処すると言いながら、意外にもハッカーを行う者達に才能を見い出してプログラム班に抜擢したり、どうにか30Dプリンタまで使えるようになって、一体型PCが何度も試作を重ねながら容量も演算速度も上がって来て、旧PCと入れかわるようになって来た。これらは、ショウやランの力も大きいが、結構居るんだよね、一芸ヲタクがさ、ははは」
「40D~60Dは、それこそ超近代型プリンタだし、その中には整形外科的な人工骨製造も可能だし、人間をスキャニングすればその人間の完全コピーも可能だ。だが、あくまで人形であって、素材は全く細胞じゃないけどね」
「そう言う技術は恐らく次世代に開発されようとしていたんだろうが、とにかくAIしかそれは行えない。思えばこの種のコマンドを人間が自分の手で出来る限界を悟ったのだろうが、やはりAIに頼り切ってっしまったんだろうな」
二人はそんな話題を談笑しながらも、本質に迫っていた。最後に、
「俺は、あくまで人間が主導する形のシステムを、ランやショウが提唱している事が正しい方向だと思うんだよ。今のMSI飛機にしても、常に主導権は部長が握っている。形態的なコピーは出来ても、それ以上のコントロールを自動化とは言え、こちらで主導しているからね」
「そうだな・・それは全く考えが同じさ。さて・・明日の最終日の会議がどうなるか、こんな大きな会は初めてだったが、全くこれまでと違ったものになった。俺達は、やっぱり地球上、宇宙上でもどちらにおいても残存人間を探す事。またどうにか現状維持が出来そうな人増員計画と共に、T新人類の扱いもどうするかだよな・・やはり特別に高い知能がある事は間違い無いからさ」
コウタが意味深な事を言った。それは後々又様々な事に繋がるのだが、今の彼らにはどうにか周囲の外堀を埋めつつ、これまでの調査・研究・実践が実を結びそうな予感がしているのであった。




