第10章 波乱
「さて・・私達は同じ部署・又兄妹でもありますので、電子回路やプログラミングにつきましては、今や専門部署も出来ておりますし、ラン班長、ショウ班長他、独自の往路グラミングは、今までに無い発想と素晴らしい構築です。到底一貫・一律の教育を受けて来た私達には思いもつかない簡素化も実現されておりますので、その事は割愛させて頂き、やはり人増員計画についての現状と、今後についての報告・発表を共同で致します」
どんな発表になるのか、一同はパネルを注視した。
「御覧のように、受胎して胎児が保育器の中に入るまで、今まで相当の人数を割いておりました。また保育器から出た幼児達は2年間、保育士によって育てられます。通常自然受胎から分娩までの生育期間は、約10月10日と言われます。ですが、その成長を現代において待っていたのでは、もし自然受胎が適っても、十分に生育する事は出来ません。男性機能の退化の事も言われておりますが、女性においても骨盤における狭窄が進んでおり、もはや自然分娩が出来る母体は稀でしょう。よって、人工授精~保育器に至るまでのプロセスが必要となるのです。この期間が半年に現在では短縮されています。そこで、色んな方策は実行されました。全て成功とは言えず、だけど失敗とも言えませんが、もうこのプロジェクトは進行しても良いと思える段階に入りましたので、これも一部の方以外はずっと丸秘の研究でしたから、最近になってプロジェクトも立ち上げました。では・・御覧頂きましょう」
奇妙な細胞が映った。どうやら、アマンとは発表内容を分けたようだ。同じ発表は出来ないからメイ・リー博士は、こう言った。
「これが再生細胞です。一昔前まではIP細胞と言われる同じような前身のものは確かにありました。ですが、ハダカデバネズミや、この発表前に言われた植物性遺伝子の中に癌を排除する酵素を出す遺伝子情報もあり、近代ではそれが現存する全ての者に組み込まれています。癌などがこの日本では一切発生しなくなったのも、約300年前と言われております。丁度優性遺伝子が発見され、ゲノムの解析は勿論徹底してそれは実験・淘汰され続け、電磁パルス爆裂の直前までまだ進化中でした。この研究がつまり300年以上継続されて来た事になります。そこにはまだAIのデータこそ入っておりますが、人為的作業が主でやって来ました。大変時間と手間のかかる研究です。実はこの細胞にある刺激を与えると、今一個の卵子の複製を5つ作る事が出来るようになりました。そして、その卵子に2つの精子を受胎させる事によって、同時に10個体の試験管ベビーが生まれる形になります。勿論、これは初の試みですから、成長等を含め注意深く監視する必要がありますが、既に3か月の保育期間を終え、次の人工授乳から後2か月もすれば保育士も今の体制から少し増やして頂けましたので、増員出来た事によって、かなり無駄の多かった作業も、30Dプリンタで増設する形で、自立できる6か月まで保育するようになった事をご報告いたします。なお、これらの詳細はアマン主査が発表されますので、現レベルについてのご質問を・・」
幾人かの手が挙がったが、もうメイ・リー博士のやっている事は、理解出来たようだ。それにその詳細はアマンが行うと明言している以上、このデータを自分達が精査し、また個別に質問すれば良いのだし、会議は明日もある。ここでこの日の会議は終了したのである。とても有意義な会議になったと、シンはこの夜はコウタと寝食を共にした。
コウタは言う。




