第10章 波乱
「とんでも無い発表があった。後で個別に聞きたい者は、カイ班長に聞いてくれ。突然で自分の頭も回らないし、補佐、室長すらも驚いた顔をしているから、また主査も加えて新たなプロジェクトチームを立ち上げよう。そう思いますが、元老よろしいですか?」
「もちろんだよ。首班の思う通りにやりたまえ・・いやはや・・驚く事の連続だ。ここへ来て、とんでも無い天才達が隠れていた才能を開花させているように思える」
神野元老も絶句しているようだった。
カイも凄い奴だったのだ。第14班だけが突出した者達では無かった事も良く分かるし、このエライ班・・【現黒川主査】・・を抜擢した眼力が、誰かは明白・・和良司令官の指示でシリマツ官吏が行ったのだ。しかし、彼らを育てたのは神野元老と言う事であり、その者は、黒服達の粛清と組織の編成を主導権を持ち変えたのだ。恐らく、神野元老はそうする事で本当の組織を動かしている黒幕の正体をあぶりだし、自らが消される事も承知していただろう。それが余命も無いと言う自己演出であり、抜擢した中で更に突出した存在であるシンに託したのであった。そのシリマツ官吏の抜擢した者達は、正確に彼らの才能を見ていたと言う事だけは言えよう。
そして、カンジの番となった。たった一日で彼らは本来発表しようと思っていた内容に、自分達の提案を入れて来た。どれも驚くようなものであり、日ごろ彼らが暖めて来た構想である事を知り、この会議がとても大きな転換になる事を感じつつ、シンも感動しているのだった。
「では・・次から次へと凄い提案が出る中で、俺もM国探索の時には地震波で協力もさせて貰ったが、カーバイド等は今や不要なものとなっている。なので、本来の自分の持ち場を組織内に戻ってからやって来た事を初公開したい。と、言うのは、この中にはやはり旧組織で秘密裡に隠密班と言うのも存在したが、同じように研究班と言うのがあって、俺も寡黙な者として通っているし、実際喋るのも得意じゃない。だから同じようなパネルにして見たので、見て欲しい」
何と・・カンジは、火薬などに詳しいショウとも被る部分はあるものの、全く違う異色の経歴を持ち、ここで地震波でもその一部を発揮したが、マイクロ波の研究をずっと続けて来た者だと言うのが分かった。即ちレーザー光だ。これは武器にも勿論なるし、光ソードにもその技術が使われている事が判明したのだ。それこそ、コウタ・ラン、ダンが今注目している分野の、はっきり言えば第一人者であった。だが、決してここまで表に出る事は無かった。その使用は日本国政府の極秘中の極秘研究であり、和良司令官が執拗にこれを探していた事も分かった。カンジがその秘密部署で寡黙な者なのは、その役務も関係していると言う事も、ここで判明したのであった。




