第10章 波乱
「元々遺伝子操作されている一代品種は、F1のみで後世にそれを伝えない部分があります。それは植物に限らず、動物もそうです。ですが、今旧ドーム外に棲息する、猿、犬、猪、兎、象も含めて、これらの動物は子孫を残しております。オオコウモリもそうです。これらは、遺伝子的に操作では無く、品種改良的なものであり、実際のDNAに大きな改良をしていない事になると思います。そして対馬海洋研究所付近の生体は、それとは違い、極端に繁殖率が落ちます。植物学以外の事であっても実にその辺りは大きく遺伝子工学的に研究分野は被ります。なので、人間を含めてある研究と実験を繰り返し行って参りました。勿論人間については実験など出来ませんから、ご参考に・・それがこの表です。つまり現実の我々の子孫を残し得る優性遺伝子は、女性化しており、男性機能が極端に衰えていると言う事と、この植物の遺伝子操作については、共通していると言う事です。そこで、T猿人のDNA等・・現在は、良いデータベース、ショウ班長の素晴らしい検索システムによって実に詳細にそれが取り出せるようになって来たので、これらの研究データを早速データベースに仮登録しました。そこから導き出したのがこれです」
少し退屈になりそうな午後の会議だが、一発で眼が覚めるような発表だったのである。これは生体学、遺伝子工学を専門とするコウタ、キョウすら思いもしなかったものである。
「ええっ!植物の遺伝子を動物内の遺伝子に組み込むだってえ?」
声を挙げたのは、キョウである。
「おかしいですか?これは、もともとある遺伝子を組み込む研究ですよ?例えば、ガン等の撲滅に役立ったのはそう言う遺伝子の技術であります。ここで、私がそう言う事をやったからと言って何を驚かれる事があるでしょう。つまり、ヤドリギの果実とは、そう言う動物性たんぱく質を取り込み、栄養価のある実にする遺伝子MIX植物です。もう我々も含めそう言う生体には組み込まれていると言う事ですよ。だから、画像のような動物性植物の生成も可能だと言う事ですしね。その点で比較するならば、和良クラゲ自体がそうではありませんか、成長遺伝子が失われた部分に集合し、そして修復を行う。その際、修復した場所からは更に次の枝を出す。だからこそ無限に広がるのです。この研究は主査・・貴方も詳しいですよね?」
「え・ええ・・はい」
アマンは少し慌てながら答えた。
「以上・・だから結果ではありません。ですが、酸素を吸い、二酸化炭素を吐き出す。その二酸化炭素を吸い、また酸素を吐き出す。これが宇宙空間に流用すれば、そこにも新植物群が出来ると言う発想です。実験では成功しましたので、報告してここで終わります」
言うだけ言って、皆を呆気に取らせながら、カイの発表は終わった。突っ込み所が満載なのに、質問すべき隙が全く無かったのである。これがカイと言う者のとんでも無い才能である事を、この場の者達は知ったのである。カイの実験はもう地球どころの話では無い。宇宙空間のどこででもそれが可能になると言う発案なのであった。スケールがとんでもなく大きかったのである・・。
全員がぽかんとする中で、シンは




