第10章 波乱
ショウは、多分もっと細々した報告をしたかったのだろうが、これを見れば一目瞭然だと、そこで話を切ったのである。呆気に取られる幹部達だったが、大きな拍手が沸いた。簡単に言っているが、とんでも無く素晴らしいプログラムを作ったのである。これぞ組織全員が参加出来るデータ集積型の現在で言うウィキペディア方式のデータベースなのだ。シンが憂えていた、どうしても第14班や、幹部連中が突出乖離してしまいそうな組織との隔絶の壁を、一気に取り払ったのである。これに付け加えれば、有用なデータは採用される事になる。疑問でも意見でも何でも良い。そこから互いの考えや、意見が反映される仕組みだ。シンも大層このショウを絶賛したし、是非神野元老、黒川主査に監修を願いたいとその場で願うのであった。彼らも顧問とか、なるべくシン達にとっては世代交代だと、自分達は一線から引く立場を鮮明にしていたのだが、彼等をここで引き戻したのだ。彼らがやはり精神的支柱である限り、組織は強くなると言う事と、今彼らが何をやっているかと言う事も、可視化が出来るのだ。それにいちいちシン達が回答をしなくても、どんどん情報は積み重なって来るし、間違った情報は削除され、訂正もされる。それに対する回答も今は調査中の事であっても、日々更新する訳だ。リンに続いて2日目の2人の発表は更に会議を盛り上げたのである。
小休止に入った。
シンの傍にアマンは居るが、エイジがやって来た。アマンとエイジは、良くテレワーク的な会議をやるので、少しエイジは紅潮気味に、
「いやあ、班長達は凄いっす。これで第14班全員の発表・報告が終わった訳っすけど、皆さん方は、改めて超人かと思うような素晴らしい内容だったっす」
「エイジ副班長、俺達は、やっぱり君も副首班と行動しているが、立ち止まれないんだよな。どこかに危機感があって。立ち止まれば終わる・・そんな感覚でやって来た。でもさ、いつも緊張状態に居たら、そのプレッシャーで人間は潰される。或る意味管理社会構造になっていて、人間がやる事は全てAIがやってくれていた。でもそのせいで人間は何も考えなくなった。希望を持たなくなった。今の生活が当たり前の時代になったんだよね。でも、俺達はその文明の最突端科学の恩恵を殆ど失った。今も確かにその遺産は残っているが、今度は自分達がそれをどう使うのかと言う部分になっている。俺達には、もっともっと自立出来る能力が眠っている。それを解放出来たら、きっと次が見えると思うんだよね。偉そうに言うけどさ、ははは」
「深い・・深いっす。首班はやっぱり別格の哲学を持っているっす」
エイジは深く感嘆しながら、深く礼をしてそこから離れて行く。アマンが、
「凄く彼は真っ直ぐなんですよね。副首班が特に目を掛けているようで、嬉しいですわ」
「あは・・どう言う報告が出て来るか楽しみだね・・さて、休憩も短い、午後までサテン・ウテン班長の発表が終わるかな・・」
少し意味深な言葉を発し、シン達は会議に戻った。
少し休憩後ざわざわとする中で、サテンが立ち上がる。




