組織
シン達は、もう第3世代、第4世代に移っている。だから、知らない事が多くても、客観的に見れば仕方が無い事なのかも知れない。
確かに大葉及び、山切りの木を網羅したシンMAPは役立った。オオコウモリは、この日は遠巻きに飛んでいるだけで襲っては来なかった。鹿の生息数は、この周辺だけでも数万頭に上るだろうと言う事だ。なら、そこに目をつけてもおかしくは無い。だが、やはり伏兵はいた。
「来たっ!逃げろっ!」
甲高い声が飛ぶ、猪の群れだった。予測をしていたし、十分警戒もしていた。しかし、出た。この猪の集団は、いきなり安息を邪魔されて、怒り狂っていた。ケンがライケンを手に持ち身構える。こちらも人間の走力など軽く超える時速30キロ以上を出す動物だ。それに体も大きく、牙は肉を裂く。シンもケンの横に走った。
「ケン!こいつらは直線的に向って来る。良いか!思いっきり一頭を狙え、こいちらも今まで恐らく他の動物に襲われた事も無いだろう。だから、俺達をこいつらも舐めているんだろう。一頭でも倒せば、逃げると思う!」
「おうっ!」
エライ班長とシリマツ官吏は、鹿の網を利用して逃れていた。だから、自分達が鹿の網の中だった。
「ふ・・エライ班長達が鹿狩りの網に入っちまった。俺達2人が猪と闘うっぽいぜ」
しかし、余裕など全く無かった。身構える2人に猪の一頭は向かって来る。逃げ場は無かった。こいつに大葉なんか役に立たないし、通路内に逃げれば、そのまま追いつかれるのだ。こう言う部分が、やはり自然を舐めているのが、人間なのである。文明の武器で防げたのかも知れないが、今の時代にそんなものなんか無いのだから。
「えいっっ!」
ケンは大男だ。膂力もあるし、強力だ。ライケンを真正面から来る猪に大上段に振った。シンは少し横に飛び、猪の心臓目がけて、突いた。
「でえいっ!」
「ぶ・・ぶぎゃああああっ!」
猪が大声を発する。確かに猪の脳天と、シンが心臓を貫いたのだ。どくどくどく・・猪から大量の血が噴き出した。他の猪は方向を咄嗟に変える。シン達の攻撃とその猪の断末魔の叫びに、驚いたのだ。
「ケン!シン君、走って!」
シリマツ官吏の甲高い声が聞こえた。すぐ正気を取り戻し、2人はその声の方向に走った。猪達が再びケンとシンを目がけて走って来る。
追いつかれる・・そう思った時だった。今度は複数だ。もはや、ライケンだけでは対処出来ないのだ。
「どおーーーん!」
大きな音がする。猪の群れは立ち止り、そこから反転をする。ショウが火薬を使った爆弾を破裂させたのだ。手に2つ持っていたその一つに、火をつけたのである。