第10章 波乱
「論文については、じっくり読ませて頂くが、その原子力、兵器を地球上で一番持っていたA国が放棄したのは、何故だと言う疑問が俺にはずっとあった。もし、良ければ、そう言う事を一番調べていた補佐に今の発表とは関係無いが、端的に言って貰えないだろうか」
ケンは少し横道とも思える質問をした。こう言う質問者が居れば、会議は当然長引くが、コウタはニコリとし、自分の意だったと言わんばかりに、
「それ・・一番本当は言いたかった事なんだ。確かに原子力を利用した発電システムは、コストが掛からない。そして核爆弾も、一発で相手国の国土を潰滅出来る威力を持つ。だから抑止力になって来た。だが、それを放てば地球全土には永らく放射能の影響が残り、半減期まで10万年以上も掛かる自体になる、自殺行為だとは誰もが思うし、その通りだが、より多くの兵器を製造する事によって国威を示そうとしたし、武器製造によってそれを経済の一貫としての産業として来たから、止める事が出来なくなった。それが、次々と蔓延するウイルスや、人類が自然繁殖能力の著しい低下によって、もはやそう言う産業は成り立たなくなった。そこで、唯一世界中で一致したのが、宇宙空間への廃棄だ。だが、ここで考えて欲しい、そんな危ない兵器が、ロケットで宇宙空間に破棄される時のリスクは余りに大きい。手段が必要なんだよ。それが宇宙エレベータ方式さ」
「ええっ!だって・・今」
ケンシンでさえ眼を剥いた。そんな開発が成されていたと言うのか・・と。
「そこを驚かれる事は無いと思う。そう言う発想は20世紀にはもうあって、実行されていないだけ。だが、これ・・核廃棄物は実は大半が深海に廃棄しているんだよ。それは今も非常に危険な行為だと思うし、MRが発見次第、宇宙空間に廃棄しているのが現在の状況だ。驚く事は無いと言うのは、A国が月領土を奪取したのは、正にそこだ。宇宙エレベータをほぼ完成させていた。だろ?それを副首班が調査していたものと被るんじゃないかと思っているが・・」
「おい、補佐。今俺に飛ばすなよ、話がややこしくなっちまうだろうが」
ダンが苦い顔になる。しかしコウタは続けて、
「今日は何時もながらの遠回り説法が、えらい短くて、どうしたんだと思っていたら、そこで広げるなよ。それこそ、全員の報告を聞いてからにしろよ、お前の独演会じゃねえんだぞ」
どっと笑いが起こった。コウタもここで気づいて、すぐ、




