組織
「なかなか大変だよな、ころころと上の方針も変わる。少しシリマツ官吏もいらっと来ていたんじゃないのかな」
「食糧事情って・・そんなに性急だったのかなあ・・」
シンが首を傾げる。
「どうやら、鹿を本格的に飼育する方針が決定したようだ」
「ふ・・お前の情報通は知っているが、もう情報管理局に居ないんだぜ?」
シンが突っ込むと、ランは
「そんなの生物班、化学班、分析班にはそう言う情報が入って来てなきゃおかしいって話だ。情報は何もネットワークだけから得るもんじゃねえよ」
ランが平然と答える。まあ、当然の事だよなとシンも相槌を打ちながら、
「じゃあ、俺達のミッションて言うのは、囲みを作り、鹿を大量に捕獲する為か・・つまり、食糧事情とは俺達が食うんじゃなくて飼育する為の飼料を用意しなきゃならない」
「だな・・でも、そうなると鹿を主食にしていたオオコウモリと闘う事になるよな」
ランの憂いはそこにあるようだった。
「だから、こちらの身を隠す、襲われない事を一番に俺達が実験台にされていた?」
「ふ・・言うなよ。俺達の立場が空しく軽く聞こえちまうだろ?でも、シリマツ官吏の今までに無い言葉は、そう言ういらだちから来ていると言う事なら、頷ける」
シンも頷いた。まさにそう言う事なのだろう。シリマツとしたら、こんなに実績も上げ、着々とドーム外活動拠点を広げているのに、あくまでそれじゃあ、今までのミッションと変わりがないじゃないかと言う不満だ。シリマツ全てを知る訳では無いが、相当高いスキルを身につけている事は確実で、エライ班長もその武芸百般と一目で分かる所作を見ても、彼らがそんな軽いチームの長である訳が無いのだ。そして、見事な指導でモチベーションも維持させながら、必要な知識も定期的にシン達に与えている。鹿捕獲の為の実動班なら、それこそ方向が見えなくなる。監視小屋は何の為にある?管理棟増築も、通路補強も全てはオオコウモリ他肉食大型獣対策では無かったのか・・
「何か聞いていると、虚しくなっちまうわ・・」
シンも溜息をつくのだった。
「なあ、神野教官は神野一Aと言う殆どトップに位置する階級になっていると聞く。つまり俺達のずっと上の上司って事になるらしい。勿論、俺達の現場に降りて来る事は無いし、顔を合わせる事も無いだろう。お前、何か知っている事は無いか?」
「いや、全く無い」
「そうか、無いか」




