第9章 新たなる境地に
彼らは、T猿人がそのままの状態で人間が干渉しないように、そこで生息できるように切り替えた模様だ。シンは、そう言う判断を下すまでにこの期間の中でその考えに至っていた。又神野元老や黒川主査も、積極的に教育現場に戻ってくれて、むしろ以前より若々しい姿で次々と人材をシン達の下に送り込んでくれていた。更に人工保育の第3.5世代以降の子達も成長しているし、T国の再生5博士達の子達もそのT国森林内で順調に育っているようだ。このT猿人にな対する情報・意識操作は、シンが敢えて誤情報を流す事で、彼らを特異な眼で見られる事を回避するなど、細かい配慮をしており、やがて彼らにとって、本来T猿人として生まれた自然環境の中で育ってくれれば良い。T猿人は見かけと違い、食が充足しているので非常に温厚で、攻撃性は無い。そして非常に知能も高い。数千年、数万年の中で彼が樹上から降りて、地球上に現人類と同じように文明を持ち進化を辿る可能性もある。それは、この和良博士が誕生させた5博士のT新人類と呼ぶ個体が、その子孫情報を書き換えて行くかも知れないし、或いはその遺伝情報にバグがあり、絶滅する可能性もあるが、シン達び今そんな未来の事を考えてどうせよと言うのだ。自分達が今にも絶滅しそうな立場に居るのに。だから、もう少ししたらT国猿人達の森に放す事を考えたのだ、秘密裡に。そこで、自由に育ってくれるたら良いとシンは考えていた。そして、それは極秘の中で、既に述べているように既に決定されたのである。彼等にとって現実とは、かくも絶体絶命の状況にあって、全ては今一瞬先も闇、未知数なのであった。
「益々黒くなりましたね、で・・報告を聞きましょうか」
シンはやはりアマンと共に、自分の部屋に招き入れたのだった。
「今日は、これを報告に来た。地下湖を発見したんだ。I国とT国の境だ。M国とも繋がっている。もともと複数の小国があったようだが、I国とT国が占拠したから、M国、I国、T国は三すくみの状態だった事は知っているだろうから、ここなんだ」
「ええ・・そう言う旧近代の世界地図は承知しております。で?」
シンにとってはそんな説明など不要なものだ。地下湖の経緯を知りたいのである。
「地下水脈がM国からI国までずっと流れており、旧大河が地下水脈になっているのは、この国だけでは無く、世界的な潮流だと言う事が最近になって分かりつつあるので、堆積物を含め、地下水脈を探す為にずっと、竪穴を光ソードで掘って、地下水が湧き出て来る場所をショウのMAPに従い、探していた。で・・これがそうだ」
マコトは、その画像を見せた。シンとアマンは少し驚きの声を・・
「でかいっすね‥相当地下に空間がある」
「だろう?それは何か人工的に壁で覆われているような周囲が硬い岩盤で覆われ、ようやく河川の流れに沿う形で、MRを飛ばしたり、水の中を潜らせて到達したのがここだ。河川は幾つもの流れがこの湖に流れ込み、それから、一つの河として地下湖からI国へ地下水脈として流れている事が分かった」
「すごい発見っすね・・これは何か意図が?」
「俺は、やっぱり自分でも思うが、実働派なんだよな。危険も伴うが、今回は頼もしい相棒の『頼』も居て、大地をとにかく歩き回った。俺達は何度も不毛の地で赤茶けた大地とか氷の地表とかT国以外には緑の大地や生物・植物に出会う事は無かった。そんな中でM国が特異な場所として際立つ。大蛇も居たし、恐竜も居た。でも、何らあれから進展も無いし、不可解な事ばっかりだ。それは、エライ班長の実働班に指名されてからもずっとだったが、このM国には、きっと重要な何かがあるような気がしてならない。そう思ってアプロ―チしていたんだ。これは役に立つか?」
「勿論っすよ!これが探していた地底湖に繋がるのならば、俺達は何と方向違いの場所を探していたんだと言う事になるっす。大手柄じゃないですか、隊長!」
シンが言うと、アマンも黙って大きく頷いた。マコトは嬉しそうな顔になり、




