第9章 新たなる境地に
「3枚のカードは、産業資料館の収蔵に関するコマンドと、展示スペースの制御、後1枚はこれらの統括する書籍などの保管庫へのキーだった」
「うん・・それはそうだったな、お陰で一気に俺達は前時代の収蔵データに関する知識を得たんだ」
「そうだ・・そこで、色々俺は補佐と共に、時には室長も加わって検証を続けて来た。その中で全く異種のカード3枚が、俺達だって、そんなに徹底してあの袋の中を見てはいないしな、厳重に縫い込まれている3重の布の中にそれがあると分ったのは、半年前なんだよ」
「半年前と言うと・・補佐とお前が月の探索をやる為にバーチャル訓練を開始した頃か?」
「まさしくその時期だよ。と言うのは、月面無人探索機のMRが伝えている通り、月表面にはもう全くA国基地の姿は無いと言う事は知っての事だ、そして、今各衛星、惑星にも探索中の報告にも全くその情報は無い。考えられる事は、電磁パルス爆裂って、どんな形で発生したのかと言う事だ。こうなると、太陽系全てがそうなんじゃないかと思ってしまう。少なくても表土には何等かの痕跡があって然るべきだし、アンテナもあって、人工衛星だって飛んでいる筈だからな」
「ああ・・検証中だが、尤も有力な考えは太陽系全てに作用した可能性だ」
「あるいは、エイジが唱えだした、太陽内での大規模磁気パルスも有り得るって言う話だろ?」
「お前・・ランだけは、しっかりそんな最新論まで入手していやがる」
ダンが少し嫌そうな顔をする。だが、ランはお構いなしだ。
「俺達は、あらゆる角度から、そのカードを解析しようと思っていたんだが、それがこの月基地の地下入り口だった。このMRが360度パノラマで画像を送ってくれるから、本当に助かるよ、その昔ってドローンと言うヘリコプターのような機械が大活躍していたらしいな、でもこの機種は優秀だから、隙間があればどこへでも入って行ける。クレーターの一つに大きな穴が開いていたからさ。今ではそこから回収作業や地下基地に探索を向けている。それに地球から見る裏側は、エイジの説が正しいとすれば、完全にその電磁パルスの影響を受けないのだが、そうじゃ無かった。裏側にも月面基地は全く無かった。代わりに幾つかの入り口はあったけどな」
「おい、ラン、横道に逸れているようだが、そのそも裏側だからこそ入り口が残ったとしたら、エイジの説は有力になるぞ」
ダンが突っ込むと、ランも
「はは・・そうなっちまうわな、だが入り口があったお陰で、こうして回収が出来ている訳だ。その話が出たついでに言うが、地球発の電磁パルス爆裂があったとして、月の裏側には影響を受けない。何故ならば、月の裏面は地球から見えないからだ。だから、両説は当てはまるんだぜ?副首班」
「く・・確かにそう反論されれば言い返す言葉もねえよ」
「おい、ラン。今はそんな事より、さっさと言えや、その理由をさ」
シンが怒りながら促した。




