第9章 新たなる境地に
まだ研究中の話は、彼女達のこれまでの努力を物語り、あくまで非公開の中で行って来た。こう言う研究があるからこそ旧組織は、各セクト別の分割で管理されていたのであろう。どこかの国でデジタル管理と言うか、それは世界的なAI管理になって行くが、プライバシー保護や人権の事も言われるものの、結果的にそうなるべき社会と言う組織と言うものには必然の流れなのである。戦争に対する巨額な経費についても、自国の内紛や警備やそう言う反乱分子は、どの国でも起きる。その為に人・モノ・巨額な経費を使うのならば、もう人もその歯車の一員としてAI管理に任せた方が、人口減に陥ってしまった世界ではそうならざるを得ないのである、必然的に。生産活動の妨げになるマイナスは避けようとする。それがそもそも組織の原理なのだ。だが、そこで一つ、人間であれば感情もある、不平や不満も起きる。だが、もう時代はそう走らざるを得なかったのだ。男性の機能を失うと言う事は、オス同士の闘争心も薄れる。そして、世界的基調として感情が希薄になっている事も、色んな観点から今では眺められている。そこに危機感を持ち、教育の場として神野黒服の登場した背景こそ、まだ人族としての生存の法則が作用したのだろうか・・シンは色々思っていた。このテーマに向かう事は、きっと何かの希望に繋がると思っているからである。
アマンは、
「首班は当然、私達の研究テーマを知るべき立場の方です。しかし、何故このような極秘の研究が組織解体後も継続されていたかについては、私の今の立場上ではお答えも出来ません。そして黒川主査もそうだと思うのです」
「そこは理解するっす。それだけ、恐らく人族としての人間の根幹部分のテーマなんだろうなとこの部屋を開けて貰うまでは考えていたんです。各研究所をそれぞれの小ドームに移行する際には確かに独自の個室を用意し、俺はそこをプライべートな空間とし、逆にオープンにしてしまって色んな情報が錯そうし混乱した非を改めたからです。立ち入らないと言うのを守って来たのが自分なんだ、でも、見せてくれるんですよね」
「勿論です。でも、それは私から積極的にどうぞと言えませんからね」
「はは・・そうでしょうね。では・・」
シンは少し驚いた。研究資材の並んだ30M四方もある大きな空間の研究室だった。そこにメイ・リー博士達とも行き来の出来る特別通路が開通していたのだ。と言うよりもともとあったその通信路を両側で閉鎖し、この通信路だけ残したと言うものらしい。外にもこう言う工事が行われている通信路があると言うのは、どうやらウテン、サテンの下に依頼が入っているようなのだ。シンはそれは干渉しないで、自由にさせていたのである。
「では、お知りになりたい研究中の細胞をお見せします」
アマンは余分な言葉は発しなかった。先ほども十分論議して来たからである。
そこで少しまた驚いた表情を見せる。それは、うにゅうにゅと蠢く奇妙な・或いは不気味とも思える赤黒色の5センチ内外のものだった。




