組織
「分かりやすいね」
カイがぼそっと言った。マコト副長は実直だ。その点この人物には裏表が無い。信用が出来ると、シンは思っていた。
「今回の件で、色々成果が上がった事を褒めて頂いたよ」
分かっているよと頷くシン達。シン達は、聞かなくてもそんな事等分かっている。
「特に、見張り小屋の建造は、素晴らしいアイデアだと。そして、大葉の移植の件も、早速実施してくれと。これが広がれば、更に行動範囲も広がる訳だからね」
確かにナイスアイデアだ。明日は出掛けなくても良い。明後日から再び移植作業を行う。約1週間すれば、大葉の囲い道が完成するだろう。300Mの通路を確保した事になるのだ。やはり、この山切りの木だけが、監視塔から離れている。他は、ほぼ正確に100M間隔で植えられているのにである。この監視塔が出来て、初めてその事が判明した次第であった。シンもこの間だけの配置には気付いていなかった。やはり実践と、予測ではズレが生じるなと思った。
その翌日の実動が無かった理由は、シリマツが実動班全員を招集したからだ。招集する度に新しい情報が入るのは、この所お決まりになっている。
「さて、皆さん、小ミーティングばかり続いていて、遅々として進まないと不満の声も聞こえて来たが、先にマコト副長以下4名が活躍されて、大きな進展があった。確かに今回オオコウモリが我々の予測に反して集団にて飛来、攻撃される事態になった。我々が回避出来る山切りの木までの直線距離が300Mに対し、時速160キロ以上で飛翔するオオコウモリには到底太刀打ち出来ない。この前皆様には、ライケンと言う武具を渡した。古代の刀に似ているが、特殊鋼で作られており、滅多な事で折れる事は無いだろうし、オオコウモリにも、よもやの場合の護身具として製造された。だが、この数の一群飛来にはどうしようもない。しかし、今回は4名の機転により、大葉が大きな防御となった。正にここまでの調査が生きて来た証だと思う。しかし、それも間一髪と言う所だったよね?マコト副長」
「はい、危ない所でした。シン君とラン君、それにカイ君が大葉の利用を咄嗟に判断をしたお陰で、事無きを得ました」
「その上で、マコト副長はオオコウモリのリーダーらしき個体に一撃を与えたよね、素晴らしい事だ。オオコウモリはリーダーが信号を出し、統率された一群で襲うと言う事が証明されたのだ」
「あ・・いや、怪我の功名ですし、たまたま私の近くに来ただけなので」
マコト副長は、謙遜では無く、素のままに答えた。シリマツ官吏は、
「そのオオコウモリだが、実はエライ首班と私が捉えて来た。勿論絶命しての話だが」
「え!それでは、すぐあの後に?」
「いや、何故か、山切りの木と第四管理塔の中間辺りに落ちて来たのだ。他の個体は居なかった。我々は大葉の傘で、ロープで縛り引きずって来たのだ」
「そうなんですか!」
全員が目を丸くしていた。余りにも迅速な行動であった。