組織
シンがふふと笑うと、会話に加わっていなかったカイも、にやっとした。二人の会話を邪魔しないで聞いているだけだが、恐らく彼にも言う事があるのだろうとはシンも思った。
「それで?」
シンは、リンの言いたい事を待った。
「シンの所属していた部署は、ネットワーク・・つまりこのドーム内のメインコンピュータに繋がっているんだろう?PC等を専門的に習わなかった実動班メンバーが異動して、それを十分に使いこなせたか?」
そこか・・シンは思った。数限りある旧時代のPCなら、実動班も使えるし、恐らく全ての者も使えるだろうが、各部屋には流石に無い。どこかで必要に応じて事務系以外の者は使う場所も決まっている。その中で、ネットワークなんて出来るのは、情報室や、情報管理局だけだろう。そこに中継になるサブメインのCPUがあるのだ。つまり、今のメンバーでそのネットワークで情報を得る立場にあったのは、シンとランだけだ。勿論シリマツ官吏やエライ班長は使えるだろう。配属になる前に面接したのは、連帯局と言う中枢の部門だ。そこで、エライ班長と初めて会った。そこが更に情報管理局の上の部署だと言う事だが、リンの真意はどこなのか、シンは少し考えた。そこで、
「ああ・・全然教えてもくれないし、皆はシカトしてそっぽを向きやがる。上司は仕事が出来ないって、毎日俺を叱るだけでさ、半年前に切れて、辞めるって言ったのさ」
「え?あ・・あはは。シン、お前、気が短いのか?ひょっとして」
「半年だぜ・・その間俺はじっと辛抱したんだ。リン、お前なら辛抱出来るのかよ」
「あ・いやあ・・無理、無理っす。俺には」
カイが、この時大笑い。
「わはははは・・そう言う事さ、リン。異動なんて上が勝手に決めるものさ。俺達は実際人生全てがコースによって振り分けされている。嫌が上にも従わざるを得ない定めさ。聞く所によると、シンは直感画像認識能力があるらしいから、恐らくその部屋のメンバーの手先の動きや、画面を見て自分で覚えたんだろう?な?」
「おう・・まさしくその通りさ。ただ、俺は瞬間には覚えられるけど、ずっと記憶には残らないから、メモしていた。見るか?ノートを」
「おう・・」
そう言ってシンが二人にノートを見せると、確かにPCの画面とキーボードの指の位置まで書いてあった。
「うへえ・・すげえな。これ。一回、一回覚えてメモったのかよ」
「だって、すぐ忘れちまうからさ」
「あは!あはははは!おうし、良く分かったよ。シン、お前は辛抱強い奴だった。取り消すよ。そりゃあ、切れて当たり前さ」
リンが笑いだすと、3人で大笑い。マコト副長が戻って来た。割と、良い子、良い子をして貰ったのかご機嫌顔であった。




