第8章 シンに初めて助手兼秘書が・・
「だからな、俺達が知り得ないDNAの中には未発見の人類発現以前の絶滅してしまった、進化の過程の中に登場しない種のDNAがあった事を否定しない。俺が言えるのはそこまでさ、主査が言いかけたのは確かに学術上の問題を提起して、それを説明しようと思っていたんだ、ね?」
「あ・・はい。そう言えば首班は、その手の説明より簡素に言えが信条でしたわね、でも、そこまで及ばないとこの議論は、収まらないと考えましたので」
「良いっす。おかげでそう言う事があるんだと思いました。なら、室長に問う。この生体が人為的に掘り出され、且つ開発されたと見ても間違いでは無いよな?逆説的に言うけどさ」
「ふう・・主査・・こう言う奴なんだよ、俺に言わすのか?それをさ」
「驚きました。そこまで思考は飛んでしまった訳ですか・・でも、私達は学者です。推論は行えません。推論は確かに分析過程ではやりますが、全てを繋げるものが無いんです」
「分かりました・・そう言う事っすね。でも、一歩進んだじゃないか、例えばM国の螺旋状地下通信路の仕組みも、何かを象徴しているように思えるし、構造的にもそれを想像しちまったよ、はは・・滑稽な思い付きだけどな」
シンが笑った。地下通信路が超巨大な、DNA・・・流石に荒唐無稽な発想だった。キョウもアマンも苦笑する他に無かったのだった。この場はこうだったが、アマンはDNAについて詳しい、ダンの傍にいるエイジ主任に連絡を頻繁にとっていた。
そこで、少し分かった事があった。
それは・・・A国のソノラ砂漠にて、やはり大掛かりな実験場の痕跡があったようだと言う連絡がシンに入った事で、今調査の真っ最中だと言うのだ。A国へは空路を使う。MSI飛機での移動である。ダンが現地に小ドームを建立し、少し長引きそうな探索となりそうだ。そこへ機材が運び込まれた事で、アマンとエイジの連絡もかなり出来るようになった。ちょっとして研究室が砂漠上に出来たと言う事だ。もともと不毛の大地、砂漠地帯がそのまま砂漠になってしまっても違和感も無いが、大規模なスーパープルーム爆発が起こったと言う事で、重点的調査を行っている訳だが、エイジの研究はアマンとも近い。共にそのDNAの提起があった事で、互いの情報を交換し合っているのであった。
「ふうん・・首班が超巨大なDNA配列のようだと言われたのかあ・・思う事が壮大だよね、俺には思いもつかないが、もしそんな空間が地下にあったのなら、和良司令官の超天才振りを驚愕とか、鬼才とか色々言っていたけど、そんな発想すら飛び越してしまうよね」
「まあ・・地下構造物の一つとして首班がその構造自体を形容しているのなら、主要システムがどこにあるのか、迷路のようだし、メービウスの帯だとも言われて来たし、確かにそこでぐるぐると光は周回するのみ、初めも無ければ終わりも無いから、センサーにも掛からないと、和良無線光ケーブルも、そこだけは例外的に未開通なのよね。そんな仕掛けがあるとは分からなかったのかも知れないし、或いは知っていてもそこを攻略する時間も足りなかったのかも知れないし」
「そう言う事にもなるんだろうね、主査・・じゃあ、こう言う事かな、もっともっと時間が必要。その為には永遠の命、もしくは活動年齢の延長が必要だったと」
「その光ケーブルをもし御していたのなら、当然未統治箇所があるのに気づいた筈よね。だけど、その時代に手段は限られていた」
まるで、瞑想ゲームのような会話だった。しかし、ダンは横から一切口を挟む事は無かった。彼らの自主性を尊重しているからだ。




