組織
「来たっ!」
今度は、間違いなく走る4人に、オオコウモリが襲って来た。完全に敵と見なしているからである。
「くそっ!追いつかれる!」
マコト副長が吹き矢を構えた。そして、地に伏せるように3人に促すと、それより前にシンは大葉を4枚採ってきており、盾のように使い、身を隠すのだった。
「ひゅっ!」
マコト副長は、先頭を恐らく指揮して居るだろう、一際大きなオオコウモリ目がけて吹き矢を吹くと、丁度右目に命中したようだ。
「ぎゅっ・・」
悲鳴とも、警戒音とも分からぬまま、そのオオコウモリが飛び去ると、一群は一斉に消えて行く。
「ふう・・危なかったなあ・・シン君の機転のお陰だよ」
マコト副長が言うと、シンは手を振り、
「いやいや・・マコト副長が正確に集団のボスに狙いを定めたからですよ。大葉は、身を隠す為にあらかじめ走りながら、幾つか適当なサイズの物に眼をつけていたんです」
その言葉に、冷静なシンの行動が、やはりこの窮地を救ったのだと感じた。いずれにしても、リン達の不用意な行動が、オオコウモリを完全に敵に回してしまった事は、そのリンが青ざめている事でも分かる。リンは、黒の短髪にしていて、敏捷さはぴか一なのだが、咄嗟の判断が少し疎い所がある。即ち一番命を落としやすいタイプである。シンは一緒に行動する事で、彼らの適性等も瞬時に理解して行った。シンが、何か特別の能力を隠しているらしい事は、既にマコト以下9人には分かっているが、そう言う意味では、全員がまだまだ自分の能力を開放してはおらず、その潜在能力が高いのは確かだ。いずれにしても、命に対して希薄であったリンも、前回の件と今回の体験で、死に対する恐怖を少しは感じたのだろう、それは良い事なのかも知れない。そのリンに対して、カイは非常に冷静だった。ぱっと大葉の影に隠れて、オオコウモリの攻撃からは逃れようとした。そして、刀を抜き、反撃出来る体制をとっていた。シンは、このカイは逆に用心深く、冷静な男だと判断したのだった。彼らは、再び、山切りの木の下に到着すると、
「第4監視塔から、一番近いのがこの山切りの木なんです。ここを第一木として、どうにか前線基地までの距離を縮めないといけないようですね。でも、ここまで一番距離があるんです。300メートルを走るのは辛いですから」
シンが言うと、マコト副長も分かっていたようだ。