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第一章 進の日常
「まあ、座りたまえ、若山君、コーヒーでも飲みながらじっくり聞こうじゃないか」
「は、はい」
恐縮しながら若山は、その上司の前に座った。
「とにかく、聖君の退任は認める事が出来ん。それに、外出許可を誰が与えたんだ、それを先に聞こう」
「えっ!聖は外出したのですか!」
「何だ・・君が許可したのかと思っていた。だが、それなら、この外山の許可無しに守衛担当が外出門を開ける訳が無い・・むむむ」
「あ・・あの。この際ですから、お聞きしたいのですが。私も聖君が企画情報室に配属された経緯を知りません。私も上部の方針を聞く立場では無いにしろ、管理責任の事を言われるのであれば、その者の能力や経歴もある程度把握しておく必要があります。その上で、無口でとっつきにくい彼が、同僚とも殆ど会話も無く、それでコミュニケーションが少なかったように思います」
「おかしいな・・それは、私の見解とは異なっているが?」
再び、外山と言う若山の上司は、若山にぎろっと眼鏡の奥底から鋭い眼光で睨んだ。
「は・・あ・・あの」
自分の管理責任を問われているのだと、若山は恐縮して声が出なかった。