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シンカラス  作者: 白木克之
107/1722

基地

「我々が着目したのは、非常に多く生息しているだろうと思われる鹿だ。その鹿を主食としているオオコウモリの食性も、少しだけだが、分かって来た次第だ。怪我の功名と申そうか、リン君の行動が、よりその事を決定づけたようだ」


 確かに糞を調べれば、何を多く食しているかは分かる。あの巨体を維持して行くには、鹿のような大型哺乳類を主食とすれば、繁殖力も高く、又集団で生活する動物だ。捕食ターゲットになりやすいのかも知れない。だからリンは、オオコウモリに餌を横取りされると思われ、襲われたのだ。妨害超音波も効かずにである。シンは、山井に少し前に聞いたのだが、オオコウモリには段階的信号伝達があって、危険信号、攻撃信号がある時には、恐らく超音波発生装置は利かないのでは無いかと言う事だ。それは、その波長が、恐らくこちらの超音波をかき消す程周波数が高く、強力だと言うのである。確かにそれもリンが襲われた事で頷けた。それに、リンを助けた訳では無い。リンと行動を共にしていたカイタニを助けたのだ。リンは、やはり身体能力の優れた男。シンMAPに従い、大木の影に隠れたのだ。そのカイタニには、きつくシンは口止めを約束させている。まあ、ニ度と野外活動をする気にはならないだろう、彼は非常に怯えていたからだ。シンと行動する山井とは、全く立場が違うのだから。


「つまり、鹿が今後ドーム内での飼育及び、牧場として繁殖・食糧候補となるだろう。またケン君の網を使い、捕獲も考えている」


 そこまであっと言う間に進んだのだなとシンは思った。確かに食の問題は、重要課題だった。同時に、人類に害を及ぼしかねないウイルスや微生物、細菌類の調査も行う。至極当然な事なのだった。そして、もっともっと問題なのは、限られた資源である。もう殆ど日本の国土には資源となるべき重金属類は残されては居ない。そして、もう100年も使用し続けて来た計器類、機械類、かろうじて在庫として保管して来たこの時代でも最重要度のあるPC、これらを動かすのはドーム内だけで可能な電力だけだ。少し聞いた話では、ドームには何重構造にも、外部からの電波遮断膜が施され、太陽光を浴びる事によって数百年劣化しない素材が使われていると言う。しかし、生活する内部は逼迫している、正に時間との勝負なのだ、そこに待ったは無いのである。

 こうして、何度もに渡る小ミーティングも終わり、リンも復帰して来た。流石に彼も単独行動の怖さとその軽挙に反省もしたのだろう。チーム内には頭を下げて回っていて、最後にシンの所にやって来た。


「済まなかったな、シン」

「ふ・・お互い様だよ。どう行動するかと言えば、誰もが一緒だ。俺達は勝手に行動していたんだしな、しかし、それを認めると言う雰囲気でもあったじゃないか、実際に」

「お・・シンもそう思っていたのか、俺もそう思ったから、行動したんだ。調べたい事が山程あるのに、ボデイガード役ばかりやっていると、気持がずっと張り詰めた状態でかなりイライラも溜まっていたからな、ストレスだった」

「確かにだ。で・・肥料は十分だって言う結論が出たよな」

「ああ・・100年の間にやせ細った石灰岩地帯の大地には、肥沃な養分を蓄積させたんじゃないのかな」


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