第6章 思わぬ事態
「そうそう、ショウ、お前はもっと前面に出て来い。なんで何時もそんなに遠慮がちなんだ、お前は自分の感覚をまだ開放していないだろう?」
「それ・・何度かシンにも言われたけど、自分では分からねえんだ・・」
「そうか、でもお前は第14班の一番後加入のメンバーであっても、同格以上のものを持っている。出て来い、もっと前面にな・・」
「え・・ああ」
ケンとリンが互いに顔を見合わせた。今でもショウは、十分色んな才能を発揮しているのだが・・と言うような顔でもあった。だが、この言葉は後になって分かって来る事になる。確かにショウは、几帳面で、プログラムも作れ、分析力にも長けている人物だけでは無かった。ただ、それはシンの第14班全員に言える話なのだ。
そのダンだが、シン達が探索したのは、短時間になってしまうが、そう変わり映えのしない結果を持って、そうこの空間に草食恐竜の存在以外の特殊性はあっても、他には殆んど目新しいものは無さそうに思えた。草食恐竜が存在する事自体が、驚愕的なものだが、彼らは敵意を全く感じないこの存在に既に緊張が薄れていたし、大胆にもリンは、その草食恐竜にタッチをしたのだ。とんでも無い事を平然とする感性の持ち主リンは、この2匹の犬達にも同じ感覚がある事を知っていた。犬達は一瞥しただけで、全く草食恐竜には興味を示さなかったのだ。そしてあっと言う間にこの空間を走り回って、ほぼ全体を把握したようだ。特に犬達にも変化は無かった。
そして、ダンの穴を覗き込む。
「ワン!」
いきなり『銀』が吠えた。
「わお!え!『銀』?お前なんでここへ・・」
ダンが驚くと、尾をびゅんびゅんと振って、『伴』も穴を覗き込む。
「『伴』もかよ・・犬を呼んだな?おい!シン、準備はもう整ったのか?」
ダンは、この空間での一端休憩にその理由がある事を悟っていたようだ。笑いながら、ダンに、
「はは・・ああ、もうお前は知らないだろうが、小型MSI飛機30機以上が、この空間及び、全ての通信路に向かって偵察飛行を行っている。お前は感づいていたようだが、そんなでかい穴を掘って何をやっているんだ?」
「ふ・・この空間には何か優しさを感じるんだよな。まあ、見てくれよ、俺の掘った穴底を」
ダンが穴から出て来ると、そこは真っ白な底面が見えるのであった。




