第6章 思わぬ事態
「あ・・そうか。ショウがそこまで遡って会話に割り込んで来た経緯はそこか・・じゃあ、もう270年以上、日本はこの和良博士によって、裏で操作されていた?」
「と言う事になるし、その時代を実際に動かして来た、和良家の隠然とした影響力もあったと言う事になるよね、そしてその資本はA国からも出ている。良くも悪くも経済を牛耳る者こそが裏の世界の主役なんだよ。その経済では必要の無くなった世界で今度は牛耳れるのは、情報を確実に得て、それを操作出来る者になる。だろう?」
「ショウ・・お前は、コツコツと本当に地味な作業をやっていたが、すげえな、その考察は・・恐れ入ったよ」
ダンが初めてこんなに人を?褒めた?苦笑いするショウに、シンは、
「ダン・・ここまでショウが今言った言葉を考えろ。俺は、その上で、恐竜が出現した2通路を確認する為に、ケンシン部長にも用意もして貰ったし、超音波攻撃も試した。結果は検証出来ていないにしても、ひとまずそっちは動けなくした。そして、こっちに通信路を進んだ。用心も怠りなくな・・」
「ああ・・そうだよ」
ダンが首を傾げる。堂々巡りの話になっているように思えたからだ。
「通信路は12。俺達は、やっとその2つを通って来たに過ぎない。その中で11中1通路を今進んで来てここに居る。緊張感もあったが、恐竜が大人しく、何の興味も俺達に示さなかった事から、今ほっとしていて、気が緩んでいるよな?」
「そりゃあ・・息を吐けって言う事だからな」
「その緊張が解けた状態で進もうと言うのは、危ういと言う事だ。ここで時間を費やす中で、見れる事はきっとある。そして、そのヒントが隠されているように思うんだ。ショウもここで俺達の知り得ぬ情報を出して来た。それが全く関係無くないような話にも見えて来ただろう?つまりだ、ある日突然に頭の中に閃いて、良し、そこからやろう、始まっているんだと言う話じゃなくて、前後左右、過去の積み重ねや状況によって、幾らでも方法論は千変万化する。それがそもそもの人類の歴史だろ?ここが太古から残存していた場所にしろ、学者が化石を掘り起こした中から、培養して誕生させた恐竜だったにせよ、とにかく図鑑にも登場しない生体だと言う事もある。疑問なんぞ無数に出て来る。目的はその本部システム・・M国の重要拠点だ。間違い無く残存しているだろう。そして、ひょっとしたら、人類が生き延びている可能性も出て来たかも知れない。それに対して、俺達は同盟国の仲間か?じゃないだろう?肉食の恐竜だって、もう食の対象と襲って来ている。他の通信路にその対象が居ないなんて誰も思っていない。それが待ての意味だ。皆も!良いか!、もう理解出来たな?じゃあ、探そう・・降りて見るか?MSI機から」
「え・・それは、だって分析結果が」
「ほぼ出ている。この光ケーブルだ。もう殆ど証明されたじゃないか。地下生活を行うにあたって、和良式光ケーブルがどう言う役目をまず果たしたのかもさ。論文があるんだよな?ショウ」
「それ・・まだ言って無かったのにさ。シンはそこまで分かってしまうのか」
ショウが頷きながらも嘆息した。




