第6章 思わぬ事態
「少し・・休息しよう。俺達は走り通しだ。ひとまず、今の緊張をほぐそうや」
「そうか・・シンがそう言うなら」
確かに、体が震える程緊張をしていた。草食恐竜はシン達を見ても、まるで無関心の様子だし、たまたまあの通信路付近に居た一頭が、灯りに誘われ覗きに来ただけなのだろう。距離的にもシン達はゆっくり遮蔽板を構築し、進んで来たから遠いように思えたが、僅か3キロに満たない距離にあったのだ。それも、今見ている個体群の大きさから見ても、まだ子供のサイズなのであろう。現ゼニゴケを食べている個体は、その倍以上はあった。推定8メートル以上の高さで、体長も10Mは下るまい。あの通信路には恐らく侵入もしない筈だ。ここには自然光がある。やや薄暗くも感じるものの、十分これなら植生も成り立つだろう。それに、シダ類も気づかなかったが、少しあるようだ。シン達は、未知の世界でこのような動植物が居る事に、少し違和感も含め、しばらく観測していくのであった。当然、その画像は瞬時に本部及び、各幹部達に流れて行く。
「むう・・こんな別世界に・・ゴビ砂漠及びM国には過酷な寒さの中で、放牧民が衰退していたと聞くが、正に・・地下なら、温度も一定。また温暖化の影響もあって、アルプスの氷河も溶けだし、砂漠にも緑が増えつつあったと聞くが、これは有史以前から存在したのかも知れないな」
そう言ったのは、キョウ班長だ。
「隔離世界か・・これは、ううむ・・やはり染色体の変異との関連はあるのかも」
そう言ったのはコウタ部長だった。
また、ここでもダンが、
「人間の雌雄を分けているのは、XY染色体なんだが、俺達の先祖から雌雄を分化する事によって種を保存、進化させて来た。しかし、今日に見られるように男性が持つY染色体はもともとバグを含み進化して来たため、修正が出来ていなかった。そして、追い打ちをかけたのが環境ホルモンの変化さ。ここにショウが居るので、お前には失礼な言葉かも知れないが、許せ」
「ああ・・良いよ、その辺の事は妹達からも教わっているからさ」
「生殖本能が衰退するって事は、そのY染色体が消えつつあって、X染色体のみが残り、人類は全て女性化してしまう事だ。ショウはYとXの両方を持っている。しかし、その事は珍しい事では無いし、今までの有史の中でもそんな事はあった。だが、この先待つのはやはり激減した人口の増員をどうするかと言う問題だった。それは今もそうであって、よくぞ5万人もこの状況で残ったものだと思う。しかし、反面今俺達が探しているが、まだ他国の人類は見つからない、現状が確認出来ているたった5万人なんだ」
「その辺は、分かるが、今お前が言っている意味とは?」
シンが質問をする。




