新章4 思いもかけぬ存在
「じゃあ、打ち合わせはやった。その通り実行したい。今回は特に捕獲と言うミッションだ。今までのような排除の方が、シンプルで分かり易い、やり易い面もあるかも知れないが、あくまでも俺達はデストロイヤーにならないと決めている。やった結果がどうあれ、十分に気をつけて欲しい。危ないと思えば構わず逃げろ、良いな!ここで勇猛さを発揮するものでは無い。俺達には、もっともっとやるべき次の事が待っているんだからな」
「おうっ!」
シンの言葉が更にぴりっと緊張感を高めた。どれだけ準備を重ねても良い。シンは安全策を第一として選択したのだ。そして、どんな些細な事にも無駄足と思えるかも知れないが、自ら足を運んだ。それを知る全員には、恐らく戦場に出る前の武者震いなのだろう、冗談を飛ばし、自らの緊張を和らげるように話していただけだ。そのカンジの画像の件も、その時考えて見れば、自分のパソコンを示し、ショウと照合させている。つまり、ハッキングでも何でも無いのだし、ランもショウもそう言うプログラミングを得意とするが、組織に居た人間として違法と言う行為は行わない。そこは鉄の掟がある隠密班のメンバーだからだ。
そして、台車に乗った鹿を見ながら、
「ごめんな、大蛇の餌にしちまうが、俺達だって無駄な殺生はしたくは無いんだ」
ケンが手を合わせた。そう言う部分にこの男の優しさが垣間見えるのである。リンが、静かな口調で、
「ケン・・俺達は大蛇をこっち側に誘導する役目だ。行こう。簡易だが、大蛇の通った後の通信路の封鎖もやらなきゃいけない。大役だぞ」
「おう・・しっかりとやろう」
2人は大蛇が今通信路で蜷局を巻いている後方から、追い込む役目だ。しかし、刺激をして逆に攻撃されかねないから、とても大事なミッションだ。
こちらは、ランとショウがコンビになり、台車の準備と、ショウが新たな捕獲した際の新ルートを示している。何しろその巨体だ。移送するのは、現在の使用出来る物に限度がある。そして強度についてもぶっつけ本番だ。それを試しては居ないのだから。また、円柱型ラッピングに上手く誘導して来れば、そこから筋弛緩剤を注入するのはこの2人だ。
そして、マコト隊長とカンジが組む事に。これは大蛇を誘導する役目だ。非常にこの役目も危険を伴う。大蛇の進行速度がどの程度なのかは分かっていない。そして、円柱型ラッピング近くまで大蛇を誘導して来たら、囮の鹿を先端までくれば放し、自分達は脇にある道に逃れねばならない。正に命がけの最も危険な役目なのだ。屈強のマコト隊長が居るとはいえ、カンジはしばらく実働班で動いては居なかった。彼の本当の実力を知るのはシンしか居なかったのだが、敢えてこの大役に任命したのにも、きっと考えがあっての事だろう。そして、最終的に全てのサインを出すのはシンとダンだ。マコト隊長によって大蛇には発信機を装填しているから、その動きが把握出来る。彼らは、もう一度言うが、ここまでの準備を重ねた上で正確に大蛇の存在場所や、M国の大体の地下都市構造の様子も掴んでいるのだ。会話の奥に彼らの行動が隠れている事は、ここまでの経緯でも十分理解出来よう。つまり、会話などはその重大な部分を敢えて口には出さないのだ。それはどこか、やはり管理された組織構造の流れ・或いは身に着けてしまった原理原則なのかも知れない。彼らはそれを意識しないで、この流れを不自然と思わず作っている。




