第一章 進の日常
「慌てて、何だね?若山室長」
声の方向に、眼鏡をかけているかなり眉毛のきりっとした人物が居た。君呼ばわりするからには、当然若山の上司であり、報告義務のある直属である事は明白だ。
「は!実は、聖君の異動につきまして、本人が拒否しましたので」
「拒否?それは退任すると言う意味かね」
「そうです。異動なら、退任するとはっきり言って部屋を飛び出しました」
「それは、駄目だ。君の管理責任が問われるぞ」
「は・・はぃい!申し訳御座いません。実は、シン君・・いえ、聖君の出した企画書について、叱ったのです。他にも彼にはミスが多いので、その事も含めて」
「・・つまり、彼・・聖君は、今の勤務に熱意を持って居なかったと言うのかね?」
「はい・・彼が異例の現場から配属されて半年になりますが、システムを飲み込めていなかったり、通常知るべき事を知らなかったり、書面上のポカが結構・・」
「ふむ・・君がここへ来る前に、実は報告を受けている。異動に関しても、君が配置転換を勧めていた事も含めてね。確かに君の彼に対する査定は、ゼロに等しかった」
「は・・はあ・・その通りの評価をしております」
そこで、その上司は更に厳しい表情で、若山をじろっと見つめた。丁度、そこへその上司の部下である、美しい金髪の女性社員がコーヒーを持って来た。