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試作短編 歩行戦艦生物

作者: 深犬ケイジ

荒唐無稽な軍艦が数多く世に出ている中、新規開拓を試みた先が歩行戦艦でした

2脚歩行の戦艦なんて馬鹿すぎて誰も書いてないと思い

誰かが思いついても避けて通った道を進んでみる

無理でも意味が無くっても馬鹿げていても陸上戦艦ってロマンありますよね?

俺の名は松戸大門と書いてマツド ダイモンと読む。


両親が言っていたが松戸の名の由来は地名に関係しているらしい。


移動に馬を使っていた時代、船着場や川の渡し船があるような場所を昔は『津』と言った。


そこの近くの村に『馬』を預けた。


その村が公領、つまりお公家さんの荘園、これが『郷』となり。


それらを一緒にして馬津郷、『うまつさ』と、省略して『まつさと』、濁って『まつど』となったらしい。


諸説あるが俺はこの説を信じている。


大門は社会的に大きな家柄となり、人間としても身体としても立派になるように願いを込めた。


俺はこの名前を気に入っている。


会社が繁盛して休みがまったく取れなく、休日出勤も重なりハードワークが続いた。


夏に入る頃には仕事も落着き、夏休みはかなり長く休めと、社長から言われた。


もともと休んでやると息巻いていた俺はここぞとばかりに長期休暇を取った。


誰にも文句は言わせない、誰よりも働き誰よりも稼いだ。


上司や同僚、後輩にも迷惑をかけないようにして休みを取った。


前々から海外旅行に行きたかった、南国の透き通るような水面がきらめくビーチにだ。


現地の植物の葉で編まれた屋根を持つ外観のコテージ。


波の音に心を癒され、なにもしない贅沢な時間を満喫しよう。


狙っていた南国はちょっとした政治的不安定があったがすぐに治まった。


外務省の情報ページにも正常化したとなっていた薄いピンクの色になっていた。


また化学工場の化学物質流失事故があった。


それは多額の費用を使い、付近は浄化され自然が戻ったそうだ。


安全を確認してチケットを取った。


そのように計画して、休みになるや颯爽と飛行機に乗り、とある南国に降立った。


予約していたホテルから迎えが来ていた。


陽気な運転手に楽園の楽しみかたについて現地人ならではのレクチャーを受け、期待に胸が膨らんでいた。


ホテルはそこそこ豪華な、嫌味のない奇麗な南国情緒溢れる感じだった、


自然由来の建材を巧みに近代建築と融合させ、快適なエキゾチックなデザインを作り出していた。


滞在して、予定通り、なにもせず緩やかに流れる時間を満喫した。


料理、酒も、大人の嗜みも満喫した。


少し変化を求めバーでグラスを傾け、現地スタッフと話していた。


第二次大戦中の旧日本軍の戦艦が座礁して、見事な朽果てた姿で残存している。


現地で保護されている政府の許可が必要な観光資源がある事を聞いた。


日本ではそんな話は聞いたことがなかった。


せいぜい、海底に眠る日本最大級の戦艦が発見されたとか、勇猛果敢に戦い沈んだ歴戦の軍艦が見つかったとか、ニュース記事を多少賑わせた位だった。


小さな島の集合した地域、そこのある地点に海面から艦橋などの構造体が露出している朽ちた戦艦があるそうだ。


廃墟や朽ちたものに美学を感じていた俺はその話に興味を持ち、現地スタッフにそこに連れて行ってくれと頼み込んだ。


最初は政府の許可がとか観光資源として開発中とか言って断っていたが。


多少の金を握らせてやると態度を変え「旦那、俺にまかせといてください」


と言ってすぐに電話をかけた。


しばらく話し込んでいたが、実ににこやかな顔で旦那は運がいい、ガイドを手配できたと言う。


ガイド寮は安くない金額だったが、俺は猛烈に働き臨時ボーナスで潤っている。


まったく問題ない。


明後日に準備が整うとのことなので予定を決めた。


待ち遠しく、期待に胸は膨らんでいた。


当日、交渉した現地スタッフに連れられ迎えに来たガイドを紹介された。


「日本人か?」「そうだ」


日焼けをした恰幅のよい男だった。


現地スタッフはその男から金を受け取っていた。


2重で金取ってやがる、調子のいいヤツだ。


そう思っていると男は車に案内した。


ぼろい車だったが内装は小奇麗にしている。


ガイドも運転席に乗りこむと早速、金を要求してきた。


このような場所では準備金と成功報酬で分けるのがいつものやり方だったが今回は政府関連にやり取りをすると言う定番の言い訳や胡散臭さを感じながらも朽ちた戦艦への渇望を抑えきれずに全額を渡した。


「日本人は好きだ! 金払いが良い、礼儀も正しい」


男は流暢なイントネーションで礼を言った。


「酒を飲み過ぎなければもっと好きだ!!」


言葉で苦労はしなさそうだ。


車は数分走り、波止場に止まった、


船に乗り換えるらしい。


船は戦争で使われ払い下げられた魚雷艇だった。


前部には少し開けた空間があり、中央に運転部屋、後部には客用の座席と天幕があった

モスグリーンに塗られ、後部の船の脇に魚雷発射管が取り付けられたままであった。


聞いてみると改造して荷物収納場所として使っていると語った。


予約していた他の客が来るそうなので少し待つと言って男はビール瓶を渡してきた。


南国の炎天下、日陰はあるがそれなりに暑い、温くてもこういう状態で飲むビールは旨い。


水っぽいがあっさりとした飲み口ののど越しがいいヤツだった。


暇だったので魚雷艇を色々見ていた、弾痕があった。


弾痕を見つけた事が男に気が付かれた、男は近寄ってきた。


あんたらの爺さん達は強かった、魚雷は外れたがきっと肝を冷してやったろうと


だが痛い目をみた、それがこれさ、弾痕を拳骨でゴンゴンと叩いた。


気にするな、こっちもそちらも誰も死んでない、怪我すらしてない。


当時は憎く悔しかったが今では戦った事を誇りにしている。


それに今は援助金を出して国を豊かにしてくれる、学校もくれたし、橋も作ってくれた。


俺の所には金を運んでくる、お陰で娘を大学にやれた、感謝しているよと。


こわもての顔が少し歪んで笑った。


「いい関係を望むよ」


俺はそう答えた。


やり取りをしていると残りの客が来た。


西洋人のグループとアジア系だ。


金回りがよさそうだ、派手な格好をしている。


IT機器を体につけている、どこぞのIT長者かと思った。


アジア人は発音から大きいお隣さんと思われる。


いや、かれらは世界中いたる所にいるから決めつられないなと。


乗り込んでくるなり、親しげに挨拶をしてきた、特に嫌な感じもしないので普通に返した。


アジア人のグループも挨拶してきた、これも普通だった。


先ほどと同じように返す。


最後に船を止めているロープを外していた、褐色の女性が乗り込んできた。


目が会うと握手と挨拶をしてきた。


その腕には肩から波の様なサメの葉の様な模様が渦を巻いて描かれていた。


褐色の肌に実によく似合っている。


トライバルのだったかな?

「奇麗なタトゥーだな、ウェイブ感が凄くクールだ。」


「ん? ありがと! これ良いだろ、自慢のタトゥーさ! 気に入っているんだ」


ありがとうの部分だけ日本語で言っている。


「親父が連れてきた人だねとよろしく、あの親父、愛想が悪かったろ、すまないな」


「そんなことないさ、ほらビールだってくれた」


女性は少し驚いていた、すぐに少し笑った。


「珍しい、あんた親父に気に入られたよ、ラッキーだったな」


そんな会話をしていると娘は親父に呼ばれた。


会話が聞こえてきた、どうやら出港準備をしている感じだ。


周りの連中が好き好きに椅子に座っている、どこか空いている所を探していると先ほどの娘が手招いている。


呼ばれるまま、運転席の部屋に入ると、小さな錠剤を渡してきた


「酔い止めだ、飲んどけ! ついでに窓際の運転席に座って、ずっと窓を見ていろ」


「そんなに凄いのか?」


「一旦外洋に出て群島に向かう、外洋の波がすこし高いんだ」


「そうさせてもらうよ……あっ、俺、酒飲んじゃった、薬とアルコールってやばくないか?」


「あたしらは結構飲んでから薬やっても問題なかった、こないだ日本人が酒と薬を一緒に飲んでたがなんともなかったぞ?」


「まぁ、最悪の場合どうころんでも酔うハメになりそうだから飲んでおくよ」


「一応、リバース袋用意しといてやる、やるときゃ外いけな」


「そうする」


不安であったがビールと錠剤を胃に流し込む。


「よい子の皆は絶対に飲み薬を飲む時は水で飲み込もう、詳しくは医療関係のHPへ!! 」


「なんだそりゃ? ジャパニーズジョークか?」


「そんなもんだ、気にしないでくれ」


船は警笛をならして出港した。


波止場をでてしばらくすると波が高くなってきた。


「これな、まだまだ序の口よ、これからもっと酷くなる」


「なぁ、少し揺れるだったか? これがか?」


船はかなりバウンドしている、窓の外と中の様子が激しくワケが分からない感じになっている。


「大丈夫か?」


「今のところ問題ない」


「やばかったらはやめにな?」


後部座席から悲鳴が上がる。


考えない事にしよう。


きっと凄惨な事になっている。


神祈っている声がするが聞こえない。


酔いはこないが揺れに耐えている。


俺は俺のことだけで精一杯なのだから。


揺れが結構長い時間続いて、そのうち島が見えてきた。


「後ろを見なくてもわかるか? 親父、休憩ポイントで態勢を整えよう」


「あぁ」


船は島のの間をすり抜け、奇麗な浜辺がある所にでた、島の間に居るせいか揺れはあまり感じられない。


林の影に大きな岩があった、気のせいか動いた気がする。


桟橋があるビーチが見える、ロケーション的にはもの凄くよい所だ。


船を桟橋によせ、娘が下りてロープを桟橋の小さい柱に括りつけている。


「お客さん方、少し休憩だ。飲みもん用意するから林の木陰にでも行って休憩しよう」


そういって、酷い顔をした集団は次々にビーチにおりて、林に向かった。


「悪い兄さん、水運ぶの手伝ってくれ」


「あぁ、今、行く」


そう言ってペットボトルのミネラルウォーターが入ったコンテナを持つ


「にいさん、にいさん、一人で持つにはきついだろ、一緒に持つんだよ」


「そうしてくれると助かる」


二人で持ってダウンしている乗客のところに向かう。


乗客は水に群がり、一息ついている。


「あたしは親父を手伝ってくるからここで一緒に休んでな」


そう言うと娘はペットボトルを渡してきた。


受け取ると、船に戻っていった。


乗客たちは落ち着きを取り戻していた。


警笛が鳴らされる、そろそろ出航するのだろう。


俺は空になった水の入っていたコンテナを持って船に向かった。


他の乗客達もぞろぞろと着いて来た。


船に乗り込むとここからは外で眺めたほうがいいと娘は言う。


前部を勧められたので柵があるドまん前に座った。


「運転の邪魔にならない?」


「そういう時にコレがある」


そういうと娘は椅子をスライドさせて運転席の天井を弄り、ふたの様な扉を開いた。


開放型のハッチがあった。


娘は乗り出して、辺りを見回す、サムズアップをする。


俺はサムズアップを返した。


「そろそろ、お目当ての戦艦だ」


娘が山並みの奥を指す。


切り立った山が海沿いの景色を狭くする。


山の中腹の辺りから徐々に黒っぽい何かが見えてきた。


「あれか……」


それは第二次世界大戦の様相をした戦艦だった。


少し斜めに傾斜しているが赤錆と黒い鉄の色合いがとても奇麗だった。


でっぱった岸のようになっている景観の波打ち際を回りこみ


戦艦の正面に行く、船を進め林が開けていき戦艦の全容が見える。


そこには悠然と立ちふさがる巨大戦艦があった。


戦艦は岸から近い所に座礁していた。


岸からは木製の橋が架かっている。


橋は小道に続き開けた小道になっている。


ゆっくりと近づき、船の横に行く。


船体に大きな穴が開いている、大きな鉄骨だろうか? 


太い岩の様な鉄の様な柱が何本も出ていた。


上を見ると船体から立ち上がる構造物がビルのようだ。


主砲は斜めなり砲身は空を向いている。


そのまま進み、船着場が見える。


船着場に着くと、娘は係留作業に入った。


「これから見学コースに行く、まだ工事中だから気をつけてくれ」


親父が注意を促す。


娘が言う、「親父、なんか船ってこんな感じだっけ?」


桟橋を移動して、ちょっとした事務所があった。


まだ工事中のようだ。


まぁ、戦艦を見に来たので、事務所なんぞどうでもいい。


親父は船に残り、娘が案内するようだ。


丁度、波止場と戦艦はUの字を描くように道が作られていた。


戦艦まで行くと、桟橋から艦の上甲板に続くタラップがあった。


「前部上甲板まで行ける、まだ工事中だから艦の中に入ったりするなよと、落ちて死ぬぞと」


娘が注意した。


正直、近づく戦艦が気になって耳に入ってこない。


他の乗客は駆け出し、我先にと戦艦に駆け込む。


娘は頭に手をやり、呆れている。


「あいつらガキかよ……」


「まぁ、気持ちは分からなくもない……」


「こっちは見慣れてるけどよ、あんたは走らなくていいのか?」


「もう少し、ゆっくり味わいたい、こんなに奇麗なんだ」


「そんなもんかね」


娘は訝しげな評定する。


他の乗客は思い思いの行動をしている。


写真を撮ったり、あちこち見回っている。


俺は船の周囲を見学できるコースがあったので見回っていた。


朽果てた戦艦がこんなに哀愁を漂わせ、美しく気高い姿をするとは思いもよらなかった。


タラップまで戻ると。


乗客たちは飽きたのか降りてきていた。


「あんたも甲板上がってこいよ、眺めは結構いい」


娘はそう言った後に乗客達に捕まり写真を撮らされていた。


俺はタラップを昇り、甲板に降立つ。


見上げる檣楼は威圧感がある、だがとても美しい。


ふと艦橋の根元にある構造体に入り口を発見した。


止められていたが少し気になって覗く事にした。


内部は破損による穴から注ぐ日光によって薄暗かったが見ることが出来た。


たしかに工事中のようで工事用具が置かれていた。


入ってしまうと廃墟マニアの血が騒ぐ、これはかなり良い物件だ。


いや極上だ。


そう思うと足が勝手に進んで行った。


艦橋が気になる。


上部構造の艦橋、ブリッジとも言うが指令を行うものが高い位置から敵を確認するところだ。


こうなると止まらない。


幸い、上に続く階段は整備されており、スムーズに登ることができた。


艦橋まで来ると、息を切らしていた。


結構な高さである。


窓にガラスはなく、風が入っている。


眺めはかなり良い、ふと下を見ると葉kの乗客と娘は船まで戻っていた。


目を細めてよく見てみると乗客達はビールを飲んでいた。


あいつ等、飽きてビール飲んでやがる。


こんなに素晴らしいものがあるのに無粋なヤツラだ。


艦橋内部を探索し、壊れている計器や誂えを見ていた。


突然、渇いた音がする。


小さな悲鳴が聞こえる。


気になって外を見てみると、一隻のボートが自分達が来た方向とは違うところから来ている。


戦艦の後部の方も水場は続いていたのだろう。


そんな事を考えていると。


また、渇いた音がした。


次に大きな爆発音がした。


ボートから何か飛んできている。


それがあたると船体は大きく振動する。


自分達のボートでは大騒ぎで乗り込んでいる。


何かおかしいと思っていると船は自分を置いて出航していった。


なんの冗談だろうか? 置いていかれた。


自分達のとは違う船が艦橋の下のところまで来ていた。


渇いた音の正体は銃の発砲音である事に気が付いた。


爆発音はRPGだ、テロリストが景気良くぶっぱなすロケット花火のでかいたちの悪いヤツ。


自分名なんて間抜けだろうか?


強盗だか? 海賊だか? テロだか?


兎に角、やばい事を理解する。


窓から離れ、対策を練る。


考えるが隠れるしかない、幸い俺がここに居る証拠はない。


とりあえず強盗だ、やつらを強盗とする。


きっとやつらは面倒な事は嫌いだろう。


とりあえず艦橋にいよう、そうしてやつらが帰るのを待とう。


まずは命の確保だ。


そうしてうずくまり様子を窺う。


数十分立つ、動きはない。


安心jしていると、突然声がした。


手を上げろ、無駄な事はするな。


俺は間抜けにも強盗に銃を突きつけられていた。


静かに昇ってきた事に気が付かなかった。


観念して艦橋を降りる、逃げ場はない、これはお手上げだ。


そう考えながら階段を下りる。


命乞いをどうやろうか?


そんな事を考えていた。


タラップまで来ると声をかけられた。


旦那ぁ、やっぱりいた、面倒をかけないでくださいよ。


そこにはこの戦艦見学ツアーを手引きした現地スタッフがいた。


「お前……なんでそこに」


「あれですよ、金のためですよ、旦那金持ってるみたいなんで地元の悪に話したんです」


「とりあえず、命は助けてくれ、金はなんとかして用意する」


「そうですね、この国の銀行で幾ら引き出せますかね?」


「とりあえず、出せるのは3000万だ」


「ドルなら嬉しいんですがねぇ」


「円だ……」


「旦那ぁ、残念です、これじゃぁ苦労の甲斐がない」


タラップを下まで降りると、色黒の如何にもなやつが近づいてきた。


首には下品な金のネックレス、指にはごてごてとした指輪。大きいサングラスだ。


「すくねぇな、やってられん、なぁ、こないだこの国がさ、情勢不安になったろ」


「ソウデスネ」


「あれ。俺達、金一杯必要、次はもっと沢山でやる、だから金沢山必要、OK?」


「OK……」


「ちょっと日本にむけてネット放映しようか?」


とりあえずボートそこに付けろ。


ボスらしき男は言う。


ちょっと一緒にボートに乗ってもらおうか。


大き目のボートに乗り込む手下も乗り込んでくる。


「ボス、持ってきた腐りそうなRPGとか爆薬とかどうしましょう?」


「持っててもアブねーから、前から邪魔だった岩壊して桟橋作るか?」


「へへっ、そう思ってもう仕掛けてますぜ」


「よーし、んじゃ皆で花火大会だ、景気良く頼む」


「それと日本人は後ろ向いて座って、狭いかた詰めないと」


「おい、目隠ししろ」


朽ちた軍艦が見える、俺もこいつらに痛めつけられ捨てられて腐ってしぬんだろうか?


目隠しをされる、だがボロキレなので隙間から戦艦が見える。


「爆破よーい、3、2、1}


凄まじい振動が来る、轟音がして耳が聞こえなくなった。


戦艦が揺れる、腹の脇から脚が生えた、ワキワキと生物的な動きをする。


目を疑う。


爆発の影響で大きく波が立つ。


目は戦艦に釘付けだ、確かに脚がある、戦艦のお尻がせりあがる。


そこには甲殻類の顔があった、でかいはさみも出てきた。


なんだアレは?


そいつはすぐに元の姿に朽ちた戦艦に戻った。


突然、頭に衝撃を覚え、意識を失った。




逃げた親父と娘、乗客達は地元の軍警察にいた。


「親父、日本人生きてるかな?」


「わからんが生きていて欲しい」


彼らは助けを政府に求め、日本人が行方不明なことを伝えた。


政府は日本から莫大な援助を受けていたから迅速な対応をしていた。


不安に駆られる娘達は固唾を呑んで慌しく動く職員達を見守っていた。


すると一緒にいたアジア人達が騒ぎ始めた。


何事かと問うとタブレット端末を渡してきた。


ライブ! ライブ! 叫んでいる。


そこには行方不明になった日本人がいた。


驚いているとアジア人は器用に音量を上げていった。





日本人は椅子に縛られていた。


暴行を受けた様子はない。


意識はうつろで目がおかしく動いている。


銃を持った男がタバコのようなものを日本人に吸わせる。


男は口でくわえスパスパと擦っている。


そのうちそれを口から落とした。


銃を持った男は日本人に何か呟いた。


日本人はカメラの方に顔を上げて何かを言い始めた。


最初は聞こえなかったが次第に大きな声になる。


「はぁーい、ボク大門、捕まっちゃった。でも生きてるよ!! 」


日本人は麻薬的なものを吸わされたようだ陽気な、けだるい感じで話す。


「サァプラァーイゥズ!!」


間の抜けた放映だった。


そして、銃を持った男達は激しく命令する。


金だ、言うとおりに言えとか聞こえる。


再び日本人が何かモゴモゴと言っている。


日本人は木の棒で殴られている、何故か笑っている。


咳き込んで、しばらく呼吸し、また言った。


「なんだか気持ちが良くなってきた、さっきのまた頂戴よ」


怒号が聞こえる、棒を持った男が振りかぶる。


突然、画面は暗くなった。


娘はタブレットを片手でもち、アジア人は慌ててそれを奪う。


「親父、あたし達、日本人、置いてきちゃった……」




あの馬鹿でかい甲殻類は本当にいたんだろうか?


戦艦借り? ヤドカリの異常にでかいヤツ? そんなバカな?


戦艦を持ち上げる、幅が戦艦の横幅ぐらいの生き物が……


これからあの脚がある戦艦を背負ったバケモノに襲われるかもしれない


違う! 戦艦が脚があって蟹っぽい巨大な!


あぁ! 脚が! 脚に! 戦艦に! 蟹が!


俺は混乱の中に居た。




そんな事を知らずに軍が出てきて救出劇がはじまるかもしれない。


日本政府が出てきて金にモノを言わせてパラミリを使いなんとかするかもしれない


自力で換金場所から出て、群島を逃げ回るかもしれない。


もしかしたらスパイ映画で見た経験と幸運が重なり逃げれるかもしれない。


薄暗い部屋でそんな事を俺は考えていた。




俺の名は松戸大門


置き去りにされた男だ。


楽観的な考えが浮かぶ、きっと救出される。


それも何度もだ。


まずはこの状況をどうにかしなければならない


救出されるのはそれからだ




俺はマツド ダイモン




これから何度も救出される男だ……




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